HP-170

音質
 低音より。低域はある程度量が多い。それなりに重心が低く厚みもあるしっかりした傾向の低域。ただし、ややぼやけ気味ではある。中域は低域に負ける印象だが、聴こえてこないというほどではない。質的には低く落ち着いた音でうわずったり張り出したりするようなことはないが、ソースによっては多少変な音を鳴らすことはある。高域はやや少なめ。地味めで伸びが足りないが、それを除くと特に癖はない。
 分解能はいまいち。特に一つ一つの音の微細な描写が不満。音場感は狭く明確さに欠けるし、耳の近くで音を鳴らす感じが気になる。原音忠実性はいまいち。一聴してやや違和感があるが、価格を考えればむしろ違和感がない方だろう。ただ、歪みは多少気になる。原音の粗や生っぽさはあまり感じられないが、粗については価格の割には感じられる。エッジはそれほどきつくないが全体的にやや粗っぽい音で、低域の量やこもり感のせいで疲れる面もあり、総合的にはやや聴き疲れしやすい印象。高域にしろヴォーカルのサ行にしろあまり痛くない。
 明瞭さはいまいち、音の鮮やかさは悪い。厚みは普通からやや厚め。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはいまいち。ただし、曇っているために温かみを感じる面はあるし、ヴォーカルは価格を考えればあまり癖や欠点のない鳴らし方ではある。ノリが良いわけでも繊細なわけでもない、無骨で飾り気のない音。ややモニター的とも言える。価格の割にしっかりした鳴らし方。低域に基づく迫力や力強さはある程度感じられるが、明るさには欠ける。響きは適度だがこもり感はやや気になる。
 弦楽器はいまいち。繊細さにしろ心地よさにしろ不満。金管楽器は力強さという意味では悪くないが、地味であまり楽しめない感じ。打ち込み系の音の表現はいまいち。切れや低域の質はそれほど悪くはないのだが、音の質感の相性が良くない。
 価格の割にしっかりした低域とモニター的な鳴らし方が特徴。ロックとの相性が良い。

装着感
 普通からやや悪め。側圧はやや弱めだが、それほどずれやすくはない。ヘッドバンドのクッションは薄めだが、ある程度幅広な上に軽量なので頭頂部の負担は特に大きくはない。
 イヤーパッドはかろうじて耳を覆うサイズ。左右方向の確度調節ができないため、あまりフィットしない。材質はシワが気になる安っぽい人工皮革。
 ヘッドバンドが短いため頭の大きい人は装着できない可能性が高い。

その他
 遮音性及び音漏れ防止は密閉型にしてはかなり悪い。
 作りは非常に安っぽい。価格が価格なので致し方ないが、それにしても相当なもの。デザインは、広い目で見れば特に癖はないが、感覚的には良いとは言い難い。
 プラグはミニプラグ。コードの太さは約3.5mm、硬くはないが、表面に細かいスリットが入っていて滑りにくいためやや扱いづらい。イヤーパッドのサイズは、外周90mm×72mm、内周50mm×30mm、深さ10mm。

付属品
ミニ→標準変換プラグ



参考
周波数特性グラフ


比較メモ
AHP-505
どちらも低音より。低域はほぼ同量。ただし、HP-170の方が重心が低く厚みもあるため、ソースによっては存在感にある程度の差が出る。AHP-505の方が薄く曇ったような質。中域はHP-170の方が低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。質的には似ている。高域はほぼ同量。AHP-505の方が若干太く明るい質。分解能はほぼ同レベル。音の分離はHP-170の方が若干上、一つ一つの音の微細な描写はAHP-505の方が若干上。音場感はHP-170の方がやや広く見晴らしが良い。原音忠実性はほぼ同レベルだが、どちらかと言うとHP-170の方が上。どちらも一聴してやや違和感がある。原音の粗や生っぽさはHP-170の方がやや感じられる。エッジはHP-170の方が若干きつく、聴き疲れしやすい。高域にしろヴォーカルのサ行にしろ大差ない痛さ。明瞭さはHP-170の方がやや上、音の鮮やかさはAHP-505の方が若干上。厚みはHP-170の方がややある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはAHP-505の方がやや感じられる。それなりに似た音だが、HP-170の方がノリが良く、AHP-505の方が繊細。HP-170の方が切れやスピード感がある。HP-170の方が無骨で飾り気のない音。響きはAHP-505の方がやや豊かでこもり感が気になる。弦楽器は大差ない。繊細さが欲しいならAHP-505、生楽器らしさが欲しいならHP-170。金管楽器も大差ないが、大抵のソースではAHP-505の方が若干明るく金属的。打ち込み系の音の表現はHP-170の方がややうまい。切れや低域の質で勝っている。使い分けるなら、繊細さやヴォーカルの艶っぽさが欲しいならAHP-505、低域の重心の低さや切れが欲しいならHP-170。

MM-HP201
HP-170は低音より、MM-HP201はやや低音より。全体的にそれなりに似た音を鳴らす。低域はHP-170の方がやや量が多い。HP-170の方が厚みや量感のあるしっかりした質。重心はHP-170の方がやや低い。中域は、低域の量が少ない分MM-HP201の方がはっきり聴こえてくることが多い。質的にはMM-HP201の方がやや明るく感じられることが多いが、ソースによってはHP-170の方が芯が通っているような感じで目立つことがある。高域はほぼ同量だが、どちらかと言うとHP-170の方が多い。質的にもそれなりに似ているが、MM-HP201の方が若干細い質。分解能はMM-HP201の方が若干上。音の分離は大差ないが、一つ一つの音の微細な描写はMM-HP201の方がやや勝っている。音場感はMM-HP201の方がやや広く明確。HP-170の方が近くで音を鳴らす感じ。原音忠実性はMM-HP201の方がやや上。周波数特性上の癖のなさで若干勝っている。原音の粗や生っぽさはMM-HP201の方が若干感じられる。エッジのきつさは大差ないが、HP-170の方が低域の量やこもり感で疲れる面がある。高域は大差ない痛さだが、ヴォーカルのサ行はHP-170の方が若干痛いと感じることが多い。明瞭さ、音の鮮やかさはMM-HP201の方が若干上。厚みはHP-170の方がややある。温かみは低域の量が多い分HP-170の方が若干感じられる。ヴォーカルの艶っぽさはMM-HP201の方がやや上。低い男性ヴォーカルはHP-170の方がしっかり鳴らしてくれるが、線の細いコーラスはMM-HP201の方が美しい。どちらも地味で無骨な傾向だが、MM-HP201の方がニュートラル。HP-170の方が低域に基づく迫力や力強さがある。響きはMM-HP201の方がやや豊か。HP-170の方がこもり感が気になる。MM-HP201は密閉型のHP-170を半開放型にしたような音。弦楽器はMM-HP201の方が繊細で伸びが良い。金管楽器はHP-170の方が太く力強い、MM-HP201の方が細く明るい。打ち込み系の音の表現は大差ないが、どちらかと言うとHP-170の方がうまい。切れや厚みで勝っている。使い分けるなら、低域の量や厚み重視ならHP-170、音場の広さや繊細さ重視ならMM-HP201。

RP-21
HP-170は低音より、RP-21はややドンシャリ。低域はHP-170の方がやや量が多い。柔らかくぼやけた質。重心の低さはほぼ同レベル。どちらも比較的しっかりした低域である点は似ている。中域はRP-21の方がやや高い音で、低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。高域はRP-21の方がやや量が多い。明るく鋭い質でかなり目立つ。分解能はRP-21の方がかなり上。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろある程度の差がある。音場感はRP-21の方が広く明確。HP-170の方が耳の近くで音を鳴らす感じが気になる。原音忠実性はRP-21の方が上。HP-170は高域があまり聴こえてこない点がマイナスだが、RP-21はそこまで気になるような点はない。原音の粗や生っぽさが感じられる度合いはRP-21の方が上。エッジはRP-21の方がきついが、HP-170は低域の量やこもり感で疲れる面があるため、総合的な聴き疲れはソースや聴く人によって変わってくるだろう。高域にしろヴォーカルのサ行にしろRP-21の方が鋭く刺さる。明瞭さ、音の鮮やかさはRP-21の方が上。厚みはほぼ同レベルだが、それよりもRP-21の方が締まった音である点に目が行く。温かみは曇っている分HP-170の方が感じられる面もあるが、人声や生楽器のリアルな温かみという意味ではRP-21の方がかなり上。ヴォーカルの艶っぽさはRP-21の方が上だが、スモーキーな感じを好むならHP-170の方が良いと感じることもあるだろう。RP-21の方がノリが良くかつ繊細。RP-21の方が切れやスピード感がある。響きは、低域はHP-170の方がやや豊か、高域はRP-21の方がやや豊か。RP-21の方がドラムや破裂音が目立つ。弦楽器はRP-21の方が繊細で生楽器らしさが感じられる。基本的にはRP-21の方が数枚上手の表現力を持っているが、チェロ等を柔らかく心地よく聴きたいならHP-170の方が良いと感じることもある。金管楽器はRP-21の方がかなり鮮やかで、しかも力強い。打ち込み系の音の表現はRP-21の方がうまい。音の質感の相性、切れ、ダイナミックな鳴らし方等、様々な点で勝っている。使い分けるなら、基本的にはRP-21、RP-21ではどうしてもエッジがきついならHP-170。

UR/29
HP-170は低音より、UR/29はかまぼこ。低域はHP-170の方がやや量が多い。若干重心が低く、やや柔らかい質。中域はUR/29の方がやや高い音で、低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。高域はUR/29の方が若干量が多い。やや明るい質で目立つ。分解能はUR/29の方が若干上。音の分離はUR/29の方がやや上だが、一つ一つの音の微細な描写は大差ない。音場感はUR/29の方がやや広く明確。HP-170の方が耳の近くで音を鳴らす感じが気になる。原音忠実性は微妙。どちらも一聴してやや違和感があるが、どちらかと言うとHP-170の方が違和感が小さい。原音の粗や生っぽさはUR/29の方がやや感じられる。エッジはUR/29の方がややきつく、多少聴き疲れしやすい。高域はUR/29の方がやや痛いが、ヴォーカルのサ行はHP-170の方がやや痛いと感じることが多い。明瞭さ、音の鮮やかさはUR/29の方がやや上。厚みはほぼ同レベル。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはHP-170の方がやや感じられる。UR/29の方が明るくノリが良い。HP-170の方がモニター的。響きは、低域はHP-170の方がやや豊か、高域はUR/29の方がやや豊か。弦楽器はHP-170の方が心地よい。UR/29の方が不自然な音色に感じることが多い。金管楽器はUR/29の方がやや鮮やか。打ち込み系の音の表現はUR/29の方がややうまい。音の質感の相性や切れで勝っている。使い分けるなら、低域の量や温かみ重視ならHP-170、明瞭さや切れ重視ならUR/29。あるいは、ロックはHP-170、ポップスはUR/29。

VTH-HD01
HP-170は低音より、VTH-HD01はかなりフラット。低域はHP-170の方がやや量が多い。重心が低く厚みもあるため、ソースによっては存在感にある程度の差が出る。中域はVTH-HD01の方がやや高い音で、低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。高域はVTH-HD01の方が若干量が多い。やや明るい質で目立つ。分解能はVTH-HD01の方がやや上。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろVTH-HD01の方が若干上。音場感は、広さはほぼ同レベルだが、VTH-HD01の方が明確で見晴らしが良く把握しやすい。原音忠実性は微妙。広い目で見るとVTH-HD01の方がフラットで癖のない音だが、中域から中高域にかけての音色はどちらかと言うとHP-170の方が違和感が小さいことが多い。HP-170の方がモニター的な意味で粗が感じられる面はあるのだが、VTH-HD01の方が細部をしっかり鳴らしてくれるぶん生っぽさが感じられる。エッジは基本的にはHP-170の方がややきつく、聴き疲れしやすい。ただし、高域やヴォーカルのサ行についてはVTH-HD01の方が若干痛い。明瞭さ、音の鮮やかさはVTH-HD01の方がやや上。厚みはHP-170の方がややある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはVTH-HD01の方がやや感じられる。HP-170の方が低域に基づく迫力や力強さがある。VTH-HD01の方が明るく爽やか。繊細さはVTH-HD01の方が感じられる。HP-170の方が無骨で飾り気のない音。響きはVTH-HD01の方が若干豊か。弦楽器はVTH-HD01の方が繊細かつ心地よい。金管楽器はHP-170の方が太く力強く、VTH-HD01の方が高く鮮やか。打ち込み系の音の表現はVTH-HD01の方が若干うまい。音の質感の相性や明るい鳴らし方で勝っている。使い分けるなら、基本的にはVTH-HD01、VTH-HD01では低域の量が足りないとか音色が不自然という不満があるならHP-170。あるいは、ロックはHP-170、それ以外はVTH-HD01。

サイン波応答


位相+高周波歪み


インパルス応答(CSD)


インパルス応答(録音波形)


100Hz・1kHz・10kHzサイン波の再生














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スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
ダイナミック 密閉型 20Hz〜20kHz 110dB 32Ω
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
140g 40mm 3m 片出し -

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
1.5 3 2 2 2 1 700円

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公開日:2009.8.29