HGP-710

音質
 低音より。低域はしっかりした量感や弾力がある感じ。量は多いのだが、あまりぼやけたり曇ったりはしない点は良い。中域は、低域の多いソースでは低域に負けるが、基本的には普通に聴こえてくる。ただし、紙のように厚みが薄く、やや癖がある。高域は質的にも量的にも控え目。低域以外の音も普通に聴こえてくるのだが、質的な意味で低域がかなりのウェイトを占めている。
 分解能は良くない。大雑把にとらえるならどの音もそれなりに聴こえてくるのだが、音の分離が良いとは言いがたいし一つ一つの音の微細な描写もこなしてくれない。音場感はやや耳の近くで音を鳴らす感じだが、明確さは普通にある。原音忠実性はいまいち。低域だけが質的に目立つことを除けば致命的な癖はないのだが、原音の粗や生っぽさがほとんど感じられない。エッジはきつくなく、聴き疲れしにくい。
 明瞭さはいまいち、音の鮮やかさは悪い。厚みは少し変わっている。低域はしっかり厚みがあるが、中域・高域はかなり厚みが薄い。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはいまいち。冷たくはないし、うわずったりする不快な癖はないという意味で最低限のものは持っているが、人声や生楽器のリアルな温かみはまったく感じられない。ノリが良いわけでも繊細なわけでもない。響きは適度で、こもり感はそれほど気にならない。ただ、低域の量が多いソースではさすがに多少気になる。中域から高域にかけて生気に欠けるのが難点。
 弦楽器はそれなりの心地よさはあるが、生楽器らしさがかなり足りない。金管楽器は地味で楽しめない。打ち込み系の音の表現は微妙。低域の量感は良いのだが、音の質感の相性は良くないし、もう少し元気よく鳴らして欲しかったところ。
 低域の質と量、それに聴き疲れのしにくさが魅力の機種。

装着感
 良好。カナル型だが、イヤーピースを耳の奥に押し込むタイプではないので装着しやすいし、耳の穴が痛くなりにくい。ずれやすい、重い等の不満もない。
 イヤーピースの材質はシリコンのようだ。3サイズ付属している。

その他
 遮音性及び音漏れ防止は良好。ただし、遮音性はカナル型にしては良くない。
 作り、デザインは価格の割にかなり良い。
 プラグは金メッキのミニプラグ。コードの太さは合流前は約1.5mm、合流後は幅約3mm・厚さ約1.5mm、エナメル仕上げなので普通のコードとは多少勝手が違うが、癖がついてもすぐに元に戻せるし、硬さも普通。

付属品
イヤーピース3種類



参考
メーカー製品ページ

周波数特性グラフ


比較メモ
ATH-CK52
ATH-CK52は高音よりのドンシャリ、HGP-710は低音より。低域はどちらもぼやけたり曇ったりしないという点では似た傾向だが、量はHGP-710の方がかなり多い。中域はATH-CK52の方が高い音で芯が通っている感じ。高域はATH-CK52の方がかなり高く鋭い音で量も多い。分解能はATH-CK52の方が上。音場感はATH-CK52の方が広いが、明確さは大差ない。原音忠実性はどちらもいまいち。傾向は違うが周波数特性に癖があるのは同じ。原音の粗や生っぽさはATH-CK52の方が感じられる。エッジはATH-CK52の方がかなりきつく、聴き疲れしやすい。明瞭さ、音の鮮やかさはATH-CK52の方が上。厚みはATH-CK52の方がある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはどちらもいまいちだが、どちらかと言えばHGP-710の方が良いか。ただ、ヴォーカルは擦れが気になっても良いからリアルさを取ると言うならATH-CK52の方が良い。ATH-CK52の方が明るくノリが良い。響きは、低域はHGP-710の方が豊か、高域はATH-CK52の方が豊か。この2機種を聴き比べていると、様々な意味で両機の中間くらいの音が良いように感じる。弦楽器はHGP-710の方が心地よいが、生楽器らしさが欲しいときはATH-CK52の方が良い。金管楽器はATH-CK52の方が鮮やかで力強いが、やりすぎな感はある。打ち込み系の音の表現はATH-CK52の方がうまい。音の質感の相性や切れで勝っている。使い分けるなら、高域の量や明瞭さ重視ならATH-CK52、低域の量や聴き疲れのなさ重視ならHGP-710。

BA-PC15
BA-PC15は低音よりのドンシャリ、HGP-710は低音より。低域はどちらもしっかりした量感がありながら極端にぼやけたり曇ったりしない点が似ている。量はBA-PC15の方がやや多め。中低域はBA-PC15の方がしっかり出る。中域はどちらも低域の量が多い割には聴こえてくる点が似ている。BA-PC15の方が癖がない。HGP-710は厚みが薄く紙のような質である点が気になる。高域はBA-PC15の方が硬くて目立つ。分解能はBA-PC15の方が上。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろ差がある。音場感はBA-PC15の方が広いが、明確さは大差ない。原音忠実性はBA-PC15の方が上。原音の粗や生っぽさが感じられる度合いに差がある。エッジはBA-PC15の方がややきつく、聴き疲れしやすい。明瞭さはほぼ互角、音の鮮やかさはBA-PC15の方が上。厚みはBA-PC15の方がある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはBA-PC15の方がやや上。BA-PC15の方がノリが良い。根本的なダイナミックさが違う。響きはBA-PC15の方がやや豊か。BA-PC15の方が音に生気がある。弦楽器はBA-PC15の方がうまい。HGP-710は生楽器らしさがあまりに不足。金管楽器はBA-PC15の方が鮮やかで力強く、楽しめる。打ち込み系の音の表現はBA-PC15の方がうまい。音の厚みや元気の良い鳴らし方で勝っている。使い分けるなら、基本的にはBA-PC15、BA-PC15では低域の量が多すぎるとか聴き疲れするという不満があるならHGP-710。

DN-T50
DN-T50はやや高音より、HGP-710は低音より。低域はHGP-710の方がやや量が多い。重心が低く厚みもあるため、存在感にある程度の差がある。中域はDN-T50の方が低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。高域はDN-T50の方がやや量が多い。明るく金属的で鋭い質。分解能はDN-T50の方がやや上。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろ若干勝っている。音場感はDN-T50の方がやや広く、HGP-710の方がやや明確。HGP-710の方が耳の近くで音を鳴らす感じが気になる。原音忠実性はDN-T50の方がやや上。HGP-710は低域だけが目立ちすぎる点がマイナス。原音の粗や生っぽさはDN-T50の方がやや感じられる。エッジはDN-T50の方がややきつく聴き疲れしやすい。高域にしろヴォーカルのサ行にしろDN-T50の方がやや痛い。明瞭さ、音の鮮やかさはDN-T50の方が上。厚みはHGP-710の方がややある。温かみはHGP-710の方がやや感じられる。ヴォーカルの艶っぽさはDN-T50の方がやや上のように感じられるが、艶っぽさよりも別の点に違いがある印象。DN-T50の方が明るく透明感があり、HGP-710の方がしっとりと落ち着いている。DN-T50の方が明るく元気でノリが良いが、HGP-710の方が低域に基づく迫力や力強さがある。響きはDN-T50の方がやや豊か。DN-T50の方がドラムや破裂音が目立つ。弦楽器はどちらかと言うとDN-T50の方がうまい。DN-T50の方が生楽器らしさが感じられる。ヴァイオリン等を澄んだ感じで聴きたいならDN-T50の方が良いが、チェロやコントラバスを心地よく聴きたいならHGP-710の方が良い。金管楽器はDN-T50の方が鮮やかで楽しめる。打ち込み系の音の表現はDN-T50の方がうまい。音の質感の相性や中高域から高域の明るさで勝っている。使い分けるなら、高域が欲しいならDN-T50、低域が欲しいならHGP-710。あるいは、明るさや生楽器らしさ重視ならDN-T50、温かみや聴き疲れのなさ重視ならHGP-710。

EMPP2C
EMPP2Cは低音よりのドンシャリ、HGP-710は低音より。低域はEMPP2Cの方が量が多くぼやけている。HGP-710の方が重心が低く、弾力がある感じ。中域はHGP-710の方が低域の曇りに覆われずはっきり聴こえてくる。中高域から高域はEMPP2Cの方が金属的で目立つ。HGP-710の方が線が細く粗がない。量は同程度だがEMPP2Cの方がやや多い。分解能はほぼ同レベルだが、HGP-710の方がやや上。音場感はHGP-710の方がやや広く明確。原音忠実性はどちらも良くない。EMPP2Cは低域の量が多すぎるし、HGP-710は原音の粗や生っぽさが感じられない。EMPP2Cの方がエッジがきつい上、低域の過剰さもあって聴き疲れしやすい。明瞭さはHGP-710の方が上、音の鮮やかさはEMPP2Cの方が上。厚みは微妙。低域から中域にかけてはHGP-710の方が厚みがあり、中域から高域にかけてはEMPP2Cの方が厚みがあるように感じる。温かみはEMPP2Cの方が多少感じられる。ヴォーカルの艶っぽさはほぼ互角。EMPP2Cの方がややノリが良い傾向。響きはEMPP2Cの方が豊かで、こもり感が気になる。弦楽器はHGP-710の方が粗がなく心地よいが、生楽器らしさが欲しいならEMPP2Cの方が良いこともある。金管楽器はEMPP2Cの方が鮮やかで力強い。打ち込み系の音の表現は微妙。低域の質感はHGP-710の方が良いが、それ以外はEMPP2Cの方が良い。使い分けるなら、中高域の鮮やかさや生楽器らしさが欲しいならEMPP2C、低域の質や聴き疲れのなさ重視ならHGP-710。

MHP-EP3
HGP-710は低音より、MHP-EP3はやや低音より。低域はHGP-710の方が量感や弾力がある。所謂重低音がしっかり出る。MHP-EP3の方が薄く曇っているような質。全体的な量としてどちらが多いかは微妙だが、HGP-710の方が圧倒的に存在感がある。ここまで対照的な質も珍しい。中域はMHP-EP3の方が低域の曇りに覆われる感じ。HGP-710の方が紙のように薄く、癖がある。高域はMHP-EP3の方が硬く金属的で量も多い。分解能はMHP-EP3の方がやや上。音場感はMHP-EP3の方がやや広いが、HGP-710の方が明確で見晴らしが良い。原音忠実性はどちらも良くないが、原音の粗や生っぽさはMHP-EP3の方が感じられる。エッジはMHP-EP3の方がきつく聴き疲れしやすい。明瞭さはHGP-710の方が上、音の鮮やかさはMHP-EP3の方が上。厚みは微妙。低域から中域にかけてはHGP-710の方が厚みがあり、中域から高域にかけてはMHP-EP3の方が厚みがあるように感じる。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはどちらも良くはないのだが、極端に悪くもない。基本的にMHP-EP3の方がノリが良いが、低域の質だけはHGP-710の方がノリの良さに貢献している感じ。響きはMHP-EP3の方が豊かで、こもり感が気になる。MHP-EP3は曇りが大きな欠点だが、HGP-710は中域から高域に生気がないのが大きな欠点。弦楽器はどちらも下手。HGP-710の方が心地よく聴けるが、MHP-EP3の方が多少なりとも生楽器らしさがある。金管楽器はMHP-EP3の方が高く鮮やかで楽しめる。打ち込み系の音の表現は微妙。低域の量感はHGP-710の方が良く、音の質感の相性はMHP-EP3の方が良い。使い分けるなら、低域の量感や聴き疲れのなさ重視ならHGP-710、高域や基本性能重視ならMHP-EP3。

RP-HJE355
HGP-710は低音より、RP-HJE355はやや低音より。低域はHGP-710の方がやや量が多い。特に所謂重低音より下はHGP-710の方がしっかり出る。HGP-710の方が厚みがありかなり存在感がある。重心はHGP-710の方が低い。中低域はRP-HJE355の方がしっかり出る。中域は、HGP-710の方が低域の量に負ける感じ、RP-HJE355の方が低域の曇りに覆われる感じ。質的にはRP-HJE355の方が癖がない。高域はRP-HJE355の方が若干量が多い。硬く明るい質。分解能はRP-HJE355の方が若干上。音の分離はほぼ同レベル、一つ一つの音の微細な描写はRP-HJE355の方が若干上。音場感は、HGP-710の方が若干広く、RP-HJE355の方が若干明確。原音忠実性はRP-HJE355の方が若干上。一聴して違和感が小さい。原音の粗や生っぽさはRP-HJE355の方が若干感じられる。エッジのきつさや聴き疲れはほぼ同レベル。高域にしろヴォーカルのサ行にしろRP-HJE355の方が若干痛い。明瞭さはほぼ同レベル、音の鮮やかさはRP-HJE355の方がやや上。厚みは微妙。低域から中域にかけてはHGP-710の方が厚みがあり、中域から高域にかけてはRP-HJE355の方が厚みがあるように感じる。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはRP-HJE355の方がやや感じられる。ヴォーカルはRP-HJE355の方がスモーキーで聴きやすい。どちらもあまりノリが良くない点は似ている。RP-HJE355の方が繊細。HGP-710の方が低域に基づく迫力や力強さがある。響きはほぼ同レベル。弦楽器はRP-HJE355の方が滑らかで心地よいし、音色も自然。金管楽器はRP-HJE355の方がやや鮮やかで、金属的な質感を出してくれる。打ち込み系の音の表現はRP-HJE355の方が若干うまい。音の質感の相性で若干勝っている。使い分けるなら、重低音の量や迫力を求めるならHGP-710、高域の量や繊細さを求めるならRP-HJE355。

TH-EB900
どちらも低音より。低域はTH-EB900の方が若干量が多い。HGP-710の方が弾力のある質、TH-EB900の方がぼやけたり曇ったりする質。重心の低さはほぼ同レベル。中低域はTH-EB900の方がしっかり出る。中域はHGP-710の方がやや明るく、低域に邪魔されずはっきり聴こえてくるが、生気に欠けるような癖が気になる。高域はHGP-710の方がやや量が多い。やや細く明るい質で目立つ。分解能はTH-EB900の方が若干上。音の分離は大差ないが、一つ一つの音の微細な描写はTH-EB900の方がやや上。音場感はHGP-710の方がやや左右に広く、見晴らしが良く把握しやすい。原音忠実性はTH-EB900の方が若干上。どちらもそれぞれ癖があるが、HGP-710の中域の癖が最も大きい印象。原音の粗や生っぽさが感じられる度合いはソースによって変わりやすい感じだが、トータルとしてはほぼ同レベル。エッジはHGP-710の方が若干きついが、TH-EB900の方が低域の量や音の圧力で疲れる面があり、総合的にはTH-EB900の方が聴き疲れしやすい印象。高域はHGP-710の方が若干痛いが、ヴォーカルのサ行の痛さはほぼ同ベル。明瞭さはHGP-710の方が上、音の鮮やかさはほぼ同レベル。厚みはTH-EB900の方が若干ある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはTH-EB900の方がやや上。ヴォーカルはHGP-710の方がやや明るく、TH-EB900の方がスモーキー。HGP-710はソースによっては癖が強く聴いていたくないような感じになるが、TH-EB900はそういうことは少ない。HGP-710の方が明るく、TH-EB900の方が低域に基づく迫力や力強さがある。響きは、低域はTH-EB900の方がやや豊か、高域はHGP-710の方がやや豊か。弦楽器はTH-EB900の方がややうまい。滑らかで心地よく、音色も自然に感じられることが多い。金管楽器はHGP-710の方が明るく、TH-EB900の方が太い芯の通っている感じ。打ち込み系の音の表現はHGP-710の方がうまい。音の質感の相性、切れ、低域の質等、様々な点で勝っている。使い分けるなら、高域の量や明瞭さ重視ならHGP-710、中域の癖のなさや温かみ重視ならTH-EB900。

サイン波応答


位相+高周波歪み


インパルス応答(CSD)


インパルス応答(録音波形)


100Hz・1kHz・10kHzサイン波の再生











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スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
ダイナミック 密閉型 8Hz〜22kHz 115dB 16Ω
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
9.5g 10mm 1.1m 両出し(Y型) -

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
2 5 4 4 4 5 2400円

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公開日:2008.8.14