第35回 HD25-1のケーブル交換

 今回は、HD25-1ケーブルの交換です。と言っても、海外で販売されているようなショートケーブル・ミニプラグではありません。国内で入手できるものをいくつか試してみた、という程度です。
 ポイントは、屋内での使用を考えていることです。HD25-1と言うとアウトドアヘッドホンというイメージが強いかと思いますが、私は屋内でもロックを聴くならかなり高いパフォーマンスを持っていると考えています。そこで、今回は通常はHD650に使われるZu MOBIUSケーブルと、HD650純正ケーブルを使用して、HD25-1を屋内で使ってみようと試みることにしました。屋内であれば、ケーブルはHD25-1純正の1.5mでは短く感じることも多いでしょうし、ミニプラグより標準プラグの方が都合が良いという人も多いでしょう。また、HD25-1の構造上、ケーブルを交換すると片出しから両出しになりますが、それもさほど不便には感じないでしょう(そもそもHD25-1は右出しなので、両出しの方が使いやすいという人もいそうです)。


・交換方法
 交換は簡単なので、解説は必要ないと思いますが、念のため写真入りで手順を追ってみましょう。
 下の写真がデフォルトの状態です。

 ハウジングを持って、左右上下のプラグを引き抜きます。やや固いので、しっかり持って慎重に行った方が良いでしょう。

 右側のハウジングにケーブルが固定されてるので、これを外さなければケーブルが取り外しできません。

 小さ目のドライバーでネジを外します。

 ケーブル固定部はこのようなパーツから成っています。

 パーツは外したままでも構いませんが、見栄えが悪いというのとパーツをなくさないためにもケーブルだけを外した状態でネジどめします。

 ケーブルはヘッドバンドの内部を通っています。HD25-1はヘッドバンドが二つに分かれる構造で、写真のように開きます。ケーブルは内側の溝に埋め込まれているだけで、接着剤等は使っていません。断線しないように丁寧に溝からケーブルを抜きます。

 ケーブルを抜いてヘッドバンドを閉じた状態です。

 次にユニットを抜き取ります。引っ張るだけで抜けます。写真はそのまま引き抜いた状態です(反転はしていません)。

 上下を逆転させて、ケーブルの差込口が下(ヘッドバンドの反対方向)に来るように差し込みます。引き抜いたときと同様、差し込むだけで入ります。

 これで準備は完了です。あとはケーブルを差し込むだけです。私が所有しているものは、HD650純正、Zu MOBIUSいずれもHD25-1純正に対して特に差し込みずらい感じはしませんが、どのケーブルも「緩くて非常に簡単に抜き差しできる」とは言いがたいです。個体差はあると思いますが、抜き差しする際は注意が必要でしょう。


・音質その1
 本サイトのレビューと比較するために、CD3300+HD53を使用して聴き比べてみました。

HD25-1純正:
 今回のベースとなります。詳しくはレビューと比較メモをご覧下さい。

HD650純正:
 HD25-1純正と比べてややマイルドになります。どちらがロック向きかと訊かれれば、個人的にはHD25-1純正だと思います。
 GRADOのSR-225等でも感じられますが、HD25-1の方がザラザラした質感や音に粗が感じられる点で、ロックとの相性が良いように思います。
 密度やこもり感はあまり変わりません。
 考えてみると、音の質感についてはHD25-1とHD650の質感の違いのようなものが、ケーブル違いだけでも割と素直に出ているようです。気のせいかと思い、何度かに分けてしつこく比べてみましたが、やはりHD650純正の方がややマイルドに感じました。

Zu MOBIUS:
 HD25-1純正と比べて密度が高く低域が多少すっきりしてこもり感が減ります。その影響もあるのかもしれませんが、音場感や定位も良くなるように感じます。
 先のHD650純正との比較で、HD25-1純正はややザラザラした質感や音に粗が感じられる点がロックに合うと書きましたが、Zu MOBIUSと比べるとHD25-1純正は密度が薄くスカスカなためにそのような印象を受けるのではないかと考えさせられます。Zu MOBIUSの方が基本能力が高い印象です。いずれにせよ、HD650純正のようなマイルドさはありません。そういう意味では、HD25-1と同様の理由によりHD650純正よりロックとの相性が良いように感じます。


・音質その2
 私の手持ちの環境の中で、ロックを聴く際に比較的高いパフォーマンスを発揮すると思われるSA-15S1+AT-HA2002を使用して聴き比べてみました。

HD25-1純正:
 CD3300+HD53と比べて密度が高く、各楽器がしっかり鳴らされているように感じます。前述の粗云々という点ではCD3300+HD53の方がロックとの相性が良い部分もあるかもしれませんが、基本能力の差の方が大きく、トータルではSA-15S1+AT-HA2002の方が勝っているように感じます。また、CD3300+HD53では低域が薄くぼやけたように感じることがありますが、SA-15S1+AT-HA2002ではそういうことはほとんどありません。

HD650純正:
 HD25-1純正と比べると密度が高く、レンジも広いように感じます。これと比べるとHD25-1純正はどこか霞んでいるように感じられることもあります。また、CD3300+HD53で聴いたときほどマイルドさが感じられません。これはロックには相性が良い方向性になっていると思います。

Zu MOBIUS:
 HD25-1純正と比べると密度が高く、HD650純正と比べると明瞭です。今回使用した3種類のケーブルの中で最も情報量が多いように感じます。そのため、楽器の生っぽさやライブ感がより良く感じられます。CD3300+HD53と比較すると、変な粗やスカスカした感じが若干減ったように感じられます。


・音質まとめ
 今回試した中では、SA-15S1+AT-HA2002+Zu MOBIUS+HD25-1が最も基本能力が高く、しかもロックとの相性も他の組み合わせに負けていないように感じました。好みはあるでしょうが、個人的にはこの組み合わせだけあれば他の組み合わせは不要に感じます。
 ただし、これはあくまでロックに限ります。クラシックの弦楽器メインの曲やヴォーカルをしっとり艶っぽく聴きたい場合にはHD650純正ケーブルを使用して他のアンプとの組み合わせを考えた方が良さそうです。ただ、やはりHD25-1は基本的にそのような用途には向かないように感じます。


・装着感や使い勝手等
 基本的に、本体はHD25-1をそのまま使っているので、装着感に大きな変化はありません。ただ、今回使用している全3種類のケーブルの重量には非常に幅があるため、装着感にも多少の影響があります。
 今回使用しているケーブルのプラグの写真です。左からHD25-1純正、HD650純正、Zu MOBIUSです。

 ケーブルの違いは下記のような感じになります。

HD25-1純正:
 重量24g。直径約2mm。ケーブルの材質はスチール。プラグは正式には不明ですが、ニッケルメッキと思われます。硬いですが、細いため特に扱いづらくはないです。

HD650純正:
 重量80g。直径約3mm。ケーブルの材質はOFC。プラグは金メッキ。柔らかくて扱いやすいです。

Zu MOBIUS:
 重量140g。直径約4mm。ケーブルの材質はシルバー合金。プラグはクロームメッキ(ただし本体側プラグは銅製)。重くて太く、その上硬くてしかも癖がつきやすいため、かなり扱いづらいです。

 HD25-1本体のケーブル抜きの重量は134gなので、Zu MOBIUSではケーブルの方が重いことになります。
 HD25-1純正は軽量なのですが、通常は右出しなので、左出しに慣れている人にとってはやや使いずらいです。HD650純正は普通のケーブルといった感じで扱いやすいのですが、Y字の合流点がやや本体に近く気になる人もいそうです。Zu MOBIUSは重くて硬いので、本体がかなりケーブルに引っ張られる感じになります。装着したまま動くと、イヤーパッドの耳への接触の仕方が若干変わるように感じます。自由に動けない感じになると思います。


 以上、交換方法から音質・装着感・使い勝手までをまとめてみました。
 なお、音質の比較はロックばかり5つほどのソースを使用し、微妙な違いを聴き間違わないために、順不同で数回ずつ聴くようにしました。その度にケーブルを交換するため、交換回数は100回近くになったと思います。おかしな話、ケーブル交換の練習をしているような錯覚に陥ったほどです。また、指先が痛くなったりもしました。
 その他の注意点としては、前述のとおりケーブルによって装着感が若干の影響を受ける上、ケーブルを交換する際はヘッドホンを一度頭から外す必要があるため、装着の仕方による音質の変化(誤差)がなるべく小さくなるように、注意しながら一定の装着感を保つように心がけたという点があります。
 主にアウトドアで使われることの多いHD25-1ですが、ケーブル交換を行いアンプ等の環境を整えると、今回述べた通りそれに応じてある程度変化が感じられます。実際問題としてケーブル交換による音質の変化は「間違いなく誰にでも感じることができる」と言えるほど大きく明確なものではありませんし、その変化が投資した金額に応じたものかは人それぞれ違ってくると思います。ただし、HD25-1の音が好きで屋内でも使いたい、或いは僅かでもいいから音質を改善したいという人は、今回の内容を参考にすると良いかと思います。







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