第22回 周波数特性グラフ掲載にあたって

 久しぶりの不定期コラムです。
 今回は、周波数特性の測定において、色々と試行錯誤した経緯の一部を紹介したいと思います。今回の内容によって、本サイトの周波数特性の測定がいかにいい加減かということが、分かる人には分かると思います。が、私個人としてはとりあえず最善を尽くしたつもりですので、ご容赦ください。
 以下、例としてTriPortを取り上げて、説明します。グラフは、ベースの周波数特性が青色、それ以外が赤色です。


・測定誤差
 本サイトで掲載している周波数特性グラフはすべて同一条件で測定していますが、どうしても誤差があります。測定装置の調子や微妙なセッティングの違いがグラフに出てしまいます。
 下の3つの図はすべて同一条件で数回に分けてセッティングや機器の起動をしなおして測定を行ったものですが、このくらいの誤差はあります。








・ヘッドホンとマイクの距離
 ヘッドホンとマイクの距離が違うと、周波数特性にも影響が出ます。
 マイクが遠くなると、減衰しやすい低周波の音圧は分かりやすく下がっています。






・径の違い
 耳で言えば、耳の穴の大きさが違うと周波数特性はどう変わってくるかも調べてみました。結果としてかなり径を大きめに取ることにしたので、ここでは径が小さい(耳の穴が小さい)場合のグラフのみ示します。径が小さい方が低域が強めに出ているのが分かります。




・音量の違い
 音量の違いによっても周波数特性の測定結果は変わってきます。スピーカーでももちろん変わってくるとは思いますが、ヘッドホンの場合にはこもったりするためスピーカー以上に影響するようです。本サイトでは1kHzでの音圧が約-40dBになるように測定していますが、試しにプラスマイナス10dBで測定したものを下に示します。
 ちなみに、どれくらいの音量なのか分からない方も多いと思いますので、分かりやすく説明すると、-30dBはかなり大き目の音量、-40dBは普通に音楽を聴く際の音量、-50dBはかなり小さ目の音量といった感じです。
 基本的な波形はかなり近いですが、音量小の時の高域の出方等にやや違いが見られます。また、今回は掲載しませんが、もっと音量を上げるとかなり波形が変わってきます。






・装着位置の違い
 ヘッドホンは人それぞれ装着位置が多少違うと思いますし、同じ人でもいつも全く同じ位置で装着しているわけではありません。
 ヘッドホンを上目に装着するか下目に装着するかでどう違いが出るかも見てみました。今回の測定では上目に装着したときには低域がやや強くなり、高域がかなり弱くなりました。下目に装着したときは若干高域が強くなっているようです。ただし、誤差かどうか微妙なところもありますが。
 装着位置と周波数特性の関連性は、ヘッドホンの機種ごとによって多少違うようですが、大抵の機種では高音は上から、低音は下から鳴らすため、おおよそ今回の結果と近い傾向になると思います。






・側圧の違い
 ヘッドホンの側圧の違いは周波数特性にも影響を与えます。側圧は人の頭の幅によって変わってくるため、困りものです。本サイトでは標準的な頭の幅を想定して側圧を決めましたが、側圧が強いときと弱いときの違いも見てみました。
 側圧が強いときは振動板とマイクの距離が若干近くなるため、全体的に音圧が高めになっていますが、それ以外の差はあまりありません。側圧が弱いときには、低域が露骨に弱くなっているのが分かります。






 以上、恥ずかしながら、ヘッドホンの周波数特性の測定に関する試行錯誤の一部を披露させて頂きました。今回はTriPortを例にして説明したため、密閉型としての視点になっていますが、開放型では側圧による音の違い等は密閉型とかなり差が出てくるでしょう。
 これらの点を頭の片隅において、本サイトの周波数特性グラフを有効に利用していただければ幸いです。







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