オーディオ専門店や大型家電量販店では、ヘッドホンの試聴コーナーを設置している店舗もあります。
ヘッドホンはスペックを見ても音質が分からない上に癖が強い機器ですし、直接肌に触れる珍しいオーディオ機器でもあるので、できれば試聴(試着)してから購入するのが望ましいです。しかし、一口に試聴と言っても、ポイントはいくつもあります。試聴するときのポイントにはどんなものがあるのでしょうか? また、試聴はどれほど有効なのでしょうか?
正直なところ、私は試聴が苦手です。私が試聴をするときは、半ば試着と思って装着感を重視して判断しています。そんな私があれこれ書くのもどうかと思うので、試聴における音質の判断には触れません。それ以外(それ以前)の問題についてまとめてみたいと思います。
☆CDの選択
試聴コーナーによっては、CDを持ち込んで試聴できるところもあります。
まず、CDを持ち込む際は必ず正規のCDを使用して下さい。コピーコントロールCD(CCCD)やレーベルゲートCDは正規のCDではありません。CD-EXTRA等のデータ領域があるものも避けた方が良いでしょう。また、CD-R等にコピーしたものも避けてください。これらのディスクを使用すると正常に再生できないばかりか、再生機器を痛める可能性があります。当然のことながら、店員に止められて試聴できないかもしれません。
CDの内容はどんなものでも構いませんが、自分が普段良く聴くものが良いです。ヘッドホンによって差が出やすい曲や、違いを探しやすい曲が分かっているなら、そういうCDを選ぶのも手です。
なお、クラシック・ジャズ以外のCDを試聴しようとすると、店員に変な目で見られたり、店員の態度が悪くなったりするかもしれませんが、気にしなくていいです。
☆再生機器・アンプ
音質はヘッドホンだけで決まるのではありません。再生機器やアンプによっても変わります。
再生機器やアンプを選べる店舗では、自分が普段使用しているものか、音の傾向が分かっているものを使用した方が良いです。
再生機器やアンプを選べない店舗でも、アンプは見える場所に置いている店舗が多いので、できればアンプによる音の違いくらいは念頭において試聴した方が良いです。また、複数のヘッドホンが同じアンプにつながれている場合が多いので、できれば自分が音を把握しているヘッドホンと比較した方が良いです。
☆周囲の環境
ヘッドホンは外界の雑音によって影響を受けます。一番の問題は音が聴き取りづらくなることで、残響音の響き方やホワイトノイズの量などは特に判断が難しいです。
密閉型の場合、遮音性がある程度高いため、多少の雑音はあまり問題になりませんが、それでも無視することはできません。
開放型の場合には、遮音性はほとんどないものが多いので、非常に大きな影響を受けます。よほど静かな環境で試聴できる店舗でなければ、開放型の試聴はあまり有意義でないことが多いです。
☆耳の聴こえ方
人の耳は、同じ人であってもいつも同じように聴こえているわけではありません。
大きな音を長時間聴いた後と、静かな環境で長時間過ごした後では、当然後者の方が敏感です。従って、外出先である店舗では、自宅で音楽を聴くときよりも鈍感になっているのが普通です。
また、試聴のときには、基本的にはドンシャリで音量が大きい方が良い音に聴こえる傾向があるようです。
これらを考慮に入れ、できるだけ細部まで注意深く聴こうとする意識が大事です。
☆装着感
頭部や耳への接触部位、側圧、ヘッドバンドの圧力、イヤーパッドやヘッドバンドの材質、イヤーパッドの角度調節の有無、重量などによって決まります。
側圧もヘッドバンドの圧力も、長時間使用するほどゆるくなります。特に、ヘッドバンドを引っ掛けて展示してあるヘッドホンの場合、ヘッドバンドの圧力がゆるくなっています。従って、実際に新品を買った場合には、試聴したときよりもきつく感じるのが普通です。ただし、側圧もヘッドバンドの圧力もある程度ゆるくできるものもあります。
逆に言うと、試聴したときにきつく感じるものは相当きつい可能性がありますし、ゆる過ぎるものは長期間使用するとゆるくなりすぎてずれやすくなったりずり落ちたりする可能性があります。
また、試聴するときは装着感について鈍感になっていることが多いです。
これらを念頭において、意識して厳し目に見た方が良いと思います。
・・・ざっくり書くつもりでしたが、思ったよりポイントが多く、かなり長くなってしまいました。それだけ、ヘッドホンの試聴は難しいということでもあると思います。これまでの内容を読んで頂ければ分かったと思いますが、音質を判断する以前の問題が非常に大きいです。
もちろん、試聴をしないよりは遥かにましです。できれば試聴してから購入したいものです。
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