概要
ヘッドホンアンプ付きポータブルDAC。Chord社独自のDACを搭載し、最大384kHz/32bit DSD128MHzに対応するハイスペック機。
入力は、HDUSB/SDUSB/同軸入力/角TOSLink/Bluetoothをそれぞれ搭載。出力は標準ステレオプラグ1個/ミニステレオプラグ2個/RCA出力1組。
その他、デジタルボリュームと入力切替ボタンと3種類のCrossfeed機能を搭載する。

デザイン・質感
アルミ削り出しで梨地処理された筐体はとてもしっかりとしており、質感が良い。
また入力・ボリューム等をLEDの色で知らせる用に小窓がついており、洒落ている。
大きさは少し厚めの単行本。重さもその程度。DACとしては大変コンパクトだが、ポタアンとしてみると少々大きい。
全体としてはiMacのような質感の良さがある。

ユーザービリティ
良くない。大きさや重さは許せるが、入力出力端子の設置場所がとても特殊な形状のため、ケーブル・アダプタを選ぶ。
というか、一般的なケーブルだと入らない可能性が高い。社外品を使っているが、USB/TOSLinkは自前で加工している。購入前に要確認。
ボリュームはしっとりとしていて悪くない。しかし、滑る割に硬いため、手汗をかいているとうまく回せない。
Crossfeedボタンを押しながら起動すると、出力が2Vrmsに調整される(固定ではない)機能があり、DACとしても使える。
入力やバッテリー状態を確認するにはLEDの配置と種類を覚える必要があるが、視認性は良い。
BluetoothはaptX対応で高音質で無線接続が可能。ただし、aptXは送信機側が対応していないと使用できないので注意。
バッテリー駆動時間は公称で8時間以上となっている。視聴時は連続で6時間ほど視聴したが、まだ30%残量があり、概ねカタログ通りの様子。
ヘッドホンアンプの出力は8〜600Ωまで対応しており、一部の特殊なものを除きほとんどすべてのヘッドホンで再生可能。
電圧も最大5Vrmsまで出力できるため、音量不足に陥ることはまず無い。サポート外だが直接スピーカーを駆動出来るだけの出力はある。
出力インピーダンスはカタログ値で75mΩと非常に低く、DF不足を心配する必要はないだろう。
Androidとの接続はSDUSBから行う。iPhoneもCCK経由で可能なはず(未確認)。手持ちのF-10D/F-01FはNeutronPlayer経由で問題なく再生できた。
地味にASIO対応のため、DTM・スタジオユースでも活躍できるだろう。

音質
端正な音。どちらかと言うと、力強く朗々と鳴らすタイプ。どこかの音域が強いわけではないため、悪く言うと無個性。
BurrBrown DACのようなキラキラした音とは対極的。Wolfson DACに近い鳴らし方。
アンプ部分の出力は相当なものを感じる。高い音圧の低音域を難なく鳴らしきる。それでいて、全域で粗を感じることはない。
特に抑揚の大きい曲で顕著で、下手な据え置き機よりドライブ能力は高い。
音は太い方で、細く繊細な音ではない。尚且つ、極めて細かい音まで拾う懐の深さがある。
ハイサンプリングのDSD/PCMに対応しているため、アップサンプリング/DSD変換したりして聴き比べてみたが、変化は感じなかった。
内部的に数千倍にオーバーサンプリングされるため、事前のサンプルアップは不要と感じる。
デジタルボリュームの出来は大変良く、どれだけ絞っても音が痩せない。音量を上げても破綻しない。
Crossfeed機能は3種類あり強弱を変化させることができるが、正直かなり微妙な変化。ヘタをするとわかない。好みによってはソフト側で加えたほうがより好ましい結果になる。
冷えた時と温まった時で、若干だが音質が変わる。冷めていると少しエッジが痩せて、押しが弱い音になる。ただ、目くじらを立てるほどではない。
ヘッドホンの相性としては、低音がブーミーで鳴らしづらいものほど、より締まった音になる。
逆にもともと制動が良いものは、締まりすぎると感じるかもしれない。
イヤホンは多くの場合、低音過多になる。物によってはバランスが破綻する。イヤホンで聴く場合は事前の視聴をおすすめする。
総合的に見て、据え置き機・DACとしての性格が強く、音質のレベルも据え置き機と比べたほうが良いレベル。
意外なことに、エッジが強く力強いのに聴き疲れしない。それでいて眠い音ではない。ある意味不思議な音。
街でぶらぶらしながら聴くというより、書斎やリビング、その他カフェなどでハイレベルな音質を手に入れたい方におすすめ。

その他
付属物はUSBケーブル/角TOSLinkケーブル/充電用ACアダプタ/ドライバーCD/取説など。
ケーブル類はポータブル用で短いので、デスクトップで聞く場合は別途購入が必要かもしれない。
コストパフォーマンスは正直そこまで良くはない。音は唯一無二の良いものを持っているが、近いレベルの音を出す機器は他にもあると感じる。
DAC・プリアンプ用途も視野にいれて購入するとコストパフォーマンスは良いだろう。



以下試聴メモ(もし近い環境であれば参考にされたし)
暖機時間 2時間以上
比較機 AUDINST HUD-mx1[AC駆動]
環境 PC(Foobar2000 + WASAPI out + 24bit + no oversampling) - USBケーブル - Hugo[バッテリー駆動]
音源はすべて可逆圧縮44100Hz・16bit。リプレイゲインを用いて曲ごとの音量差を抑えている。
そのため、24bit出力ではあるがビットパーフェクトではないことに注意いただきたい。
音量は聴覚上で調整、ヘッドホン自体の音質影響を抑えるために三種類の評価を行い、総合評価としている。

試聴曲一覧
@ SQUARE ENIX:Chrono Cross Original Soundtrack:Track 1:CHRONO CROSS ~時の傷痕~
  ゲームのオープニング曲。アコギから始まり、フルート、バイオリン、マラカスと音色が多く、激しい抑揚が特徴の曲。
A NAMCO:Tales Of Legendia -Original Soundtrack-:Track33:デルクェス・黒い翼
  ゲームのボステーマ。NHKホールで録音された本格的なオーケストラ。音量差が激しく、音域が広いのが特徴。
B Muse:Black Holes And Revelations:Track4:Map Of The Problematique
  UKロックの代名詞のMuseアルバムから。音の密度が濃く、ボーカルとエレキが淡々と流れる。
C Diverse System:works.3 (disc 2: Heavy work):Track1:Perform Ur Mission
  同人のエレクトロニックを得意とするグループ。分厚いシンセ、ベースを基調とし、ブラス系のメロディーラインが特徴の曲。



ヘッドホン ATH-AD2000X

HUD-mx1
@ニュートラルな音。超低音からきちんと出ている。高音に少し粗がある。解像度に不足は感じない。どちらかと言うと線が太い鳴らし方。
A低音のアタック感が少し足りない。迫力に欠ける印象。全体的に音が柔らかい。
B全体的に音が柔らかい。ボーカルが少し遠い。エレキはエッジが潰れているように感じる。中音は滑らかで聴きやすい。
ハイハットの音が少し鳴らしきれていない印象。
C中堅な音。エレキックの音が少しなりきっていない。高音は尖ること無くナチュラル。中音を中心としてなめらかな印象。
割と暖色系。硬い音は出さない。

Hugo
@ニュートラルな音。どちらかと言うと暖色系。超低音からきちんと出ている。中音から高音にかけてなめらかな印象。
チャンネルセパレーションがよく、左右できちんと楽器が分離する。
A低音のアタック感が非常にしっかりとしている。楽器ごとの細かいかき分けがうまい。ブラスの音が端正。
少ない音量でも音が痩せることがない。線が太く、一体感のあるなら仕方でいて、音が混ざって聞こえることはない。
B一聴してエッジが立った音。刺激的というよりかは鮮明。タムの音がきちんとなっている。ボーカルが遠い印象はあるが、より目立っている。
mx1で聴こえないタムの音が聞こえる。音の収束が早く、端正な音。音の鳴りが早く・立っているので厚みは感じない。
Cエッジの効いた音。中音を中心として前に出てくる。シンセの倍音がしっかり聞こえる。ベースの音圧を感じる。
音場が少し広く感じる。パンが振り切っている際の音がより細かく聞こえるため。情報量が多く感じる。ただ、疲れる感じはない。



DT880 Edition 2005 に変更して再度比較

HUD-mx1
@フルートが浮き立って聞こえる。ベースの倍音もきちんと聞こえる。音の密度が濃い。
A音が少し軽いか。腰高に感じる。音場は十分とれている。チェロの音がすこし遠い。音量が小さい箇所は少しモヤがかかった印象。あまり印象に残らない音。
B中音を中心としてナチュラルな印象。特に不満点はない。解像度や音の厚みは必要十分な印象。ただ、特徴もない。
Cハイハットの音が少し甘い。その他の音域は中立的で特に不満を感じない。シンセベースの音はしっかり聞こえる。

Hugo
@フルートに奥行きを感じる。立体的とも感じる。ギターのピックの音がはっきりしている。エッジが効いており、音圧が高く感じる。
音の密度は中程度。どちらかと言うとあっさり系。ただ、楽器の音はかなり細かい音まで拾う印象。
Aタムの音が力強い。抑揚が大きく感じる。こちらに迫ってくるような音。シンバルの音が伸びきっている。音量が小さい箇所は残響音を感じる。
B音の立ち上がりがはっきりしている。ボーカルのブレスがはっきり聞こえる。録音のノイズ?か何かが聞こえる。エレキに厚みを感じる。
C高音の倍音がよく聞こえる。小さなハイハットのアタック音が聞こえる。音が拡散して聞こえるシーンで、より多くの音が聞こえる。
エコーの残り音が聞こえる。



SW-HP10 に変更して再度比較

HUD-mx1
@端正で勢いのある音。フルートの音ははっきり聞こえる。鳴りっぷりは良い。
Aスピード感のある音。抑揚もきちんと表現されている。タムの響きも良い。
Bキレのある音。ボーカルが際立って聞こえる。エレキの基音もしっかり聞こえる。
Cアタック感のあるしっかりした音。全域で不足を感じない。

Hugo
@すこし腰が座った印象。フルートの音は基音がより強調されて聞こえる。小さくなっているバイオリンの音がよく聞こえる。鳴りっぷりは良い。
金属的な音もきちんと書き分けている。
A更に立ち上がりが速い音。抑揚が大きい。破裂音に近い音もきちんと出ている。情報量が多く、圧倒される時がある。
Bマラカス?の音が聞こえる。こんな音は入っていたか…?タムの音が立体的で空間に広がっている感じ。全体的にしっかりと腰が座った鳴り方。
Cシンセの基音がより際立っている。スイープした高音が痛く感じる。チャンネルセパレーションがよく、センターの音と左右の音が混ざらない。
シンセの音圧が高まっているような印象を受ける。音の立体感が強く、パンされた音を追ってしまう。



比較終了。小休憩。

冷えきったHugo + ATH-AD2000X
若干押しが弱くなったか?わずかに高音の伸びが足りない。痛い音が出た場面でさほど刺激を感じない。
激しいくらいの抑揚がおとなしく感じる。全体のバランスと解像度には特に変化を感じない。










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Hugo 投稿者:shyachi 投稿日:2014.3.26

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