第5回 K271studio vs SE-A1000

 あー、ちょっとやりづらいのが来てしまいましたねぇ・・・
 やりづらい理由は、一般論とは違う結果になってしまうのが予想できるからです。まあ、好みのコーナーなので別にいいのですが。
 K271studioは一部でかなり有名な機種です。逆に、SE-A1000はオーディオ銘機賞をとっているにもかかわらず知名度が低い機種です。しかしどっちも実売1万円台で、なかなかバランスの良い機種だと思います。

類似点:温かめの音調
相違点:密閉型特有のこもり感の有無

 それでは覚悟を決めて行ってみますか・・・


・宇多田ヒカル「First Love」
K271studio:
ヴォーカルが美しいだけでなく、艶っぽさと力強さがあります。金管楽器は美しい音を鳴らしますし、ピアノやヴァイオリン、タンバリンも十分自然で、役割を果たしています。全体のバランスも良く、ほとんど文句ない鳴り方をしてくれました。ギターがあまり聴こえてこなかったのは少し残念でした。
SE-A1000:
ヴォーカルがとにかく繊細です。金管楽器やヴァイオリンはなかなか美しいのですが、ベースの低音がちょっと出過ぎに感じます。そうは言っても全体的に透明感があり、この曲の温かみがきれいに伝わってきます。
比較:
ほぼ互角です。どちらもかなり魅力的でて、この曲との相性が良いです。あえて勝敗をつけるなら、バランスの良さで勝っていた点を評価しK271studioの勝ちです。

・BUNP OF CHICKEN「天体観測」
K271studio:
ヴォーカルはなかなか良く聴こえます。ギター、ベース、、ドラムはすべて聴こえてはくるのですが、音に鋭さがない等どこか求めている音と違います。ノリが良いとは言えません。やはりこのヘッドホンの得意分野はクラシックなのでしょう。
SE-A1000:
ヴォーカルはかなり良く聴こえます。ギターやハイハットは良いのですが、ベースはやや薄くて動きが良く分からないです。全体的にもう少し低音に厚みがあればスピード感も増し、完成度が上がったと思います。
比較:
今回のヘッドホンはいずれも温かめの音調であるため、この曲との相性は良くなかったようでした。しかしそれでもなお、SE-A1000の方が良かったです。

・system F「TOGHETHER」
K271studio:
K271studioは密閉型のため、開放型のSE-A1000と比べると低音に密閉型特有の厚みがあります。それがこの曲ではかなりはっきり出ました。つまり、K271studioの方が低音が豊かな一方、しゃきっとした音があまり楽しめなくなってしまっています。
SE-A1000:
音が響きすぎで、それぞれの音がゆっくり楽しめないのが残念ですが、基本的には楽しく聴けます。この曲の幸福感が良く伝わってきます。もう少し切れが良ければ言うことなかったのですが。
比較:
SE-A1000の勝ちです。この曲に限って言えばK271studioは低音が出すぎです。その影響で高音が全く楽しめなくなっています。

・「パッヘルベルのカノン」
K271studio:
弦楽器が素晴らしいです。が、ちょっとでしゃばりすぎです。オルガンがあまり聴こえてきません。全体的には繊細さと温かみにあふれ、この曲の魅力を良く表現できていると思います。
SE-A1000:
全てがかなり良くまとまっています。弦楽器の自然さ、オルガンの鮮やかさどちらもかなり良いです。その上各楽器が全く浮くことなく調和しています。ただ、まとまりすぎているので、もう少し刺激的な音を鳴らしてくれてもいいかな、と思いました。
比較:
どちらもなかなか良い音を鳴らします。弦楽器の音の自然さや厚みではK271studioに分があるのですが、オルガンの音色と全体的なまとまりを加味すると、SE-A1000の方が若干良いようです。このあたりは好みで結果が変わるでしょうが。

・ロード・オブ・ザ・リング オリジナルサウンドトラックより「The Bridge Of Khazad Dum」
K271studio:
ブラスがやや曇っているというか、音が低めに感じられます。弦楽器や合唱は良いのですが、ブラスの曇りのせいでこの曲のスピード感がいまいち出ていません。それ以外は非常に良いです。
SE-A1000:
ブラスが非常に美しいです。弦楽器、合唱もやや厚み不足かなとは思いますが及第点です。この曲のスピード感と緊張感を余すことなく伝えてくれます。この曲自体響きすぎなので、SE-A1000の響きの豊かさとは合わないのではないかと思ったのですが、杞憂でした。そんなものはブラスの美しさが吹っ飛ばしてくれました。ブラスが美しいのは分かっているつもりでしたが、予想以上でした。
比較:
SE-A1000の勝ちです。これはもうブラスの輝き勝負ですね。どちらもまとまった音楽を聴かせてくれるのですが、K271studioの曇ったブラスではSE-A1000のブラスには対抗できませんでした。


 今回のヘッドホンはどちらも分解能や音場感がいまいちで、音調も温かめだったので、シャープさを求める音楽には合わない結果となりました。あえて得意分野を探すなら、どちらもクラシックでしょう。もしくはしっとり系の女性ヴォーカルにはなかなか合いそうです。
 比較前はK271studioはやや高音より、SE-A1000はややドンシャリだと思っていたのですが、低音の厚みではやはり密閉型のK271studioに分があったようです。厚みというよりはこもり感なのかもしれませんが。
 まあ、そんなわけでして、結果はSE-A1000の勝ちでした。なかなかいい勝負でしたけどね。多分K271studioを持っている方にとっては納得がいかない結果かと思いますが、私の好みということでご了承ください。というか、SE-A1000は実力のわりにホームシアター用ヘッドホンという売り文句だけで敬遠している人があまりに多いと思います。私も買うかどうかかなり悩みましたが、買って良かったと断言できる珍しい機種です。6mのコードはうざいですが。
 SE-MONITOR 10RといいSE-A1000といい、なかなか私好みのヘッドホンを出してくれているPioneerですが、2万円以上の高級機種は出していません。今後ぜひ出して欲しいと思います。