German Maestro社のフラッグシップモニターヘッドフォン3機種の中の密閉型。日本で一時期CHARTER OAK SP-1として売られていた機種のOEM元のヘッドホンである。
音の傾向はフラット〜やや高域よりで、全体的に音が細身。
低域の量は多くは無いがある程度下までしっかり伸びているし、実体感もそれなりに感じられる。が、やはり目立つほどではない。
中域は他の帯域に邪魔されることもなくはっきり聞こえてくるし、ボーカルが引っ込んだり埋没するような事もない。
高域はしっかり伸びている。線が細く繊細な印象で、質はかなり高いし量も十分ある。荒や癖などは特に感じない。
音場感は良好。左右方向にはかなり広いが前後や上下方向はさほどでもない。また立体感はあまり感じられず平面的な鳴り。但し定位は非常に明確。
密閉型のこもり感については特に気になるようなことは無い。
音の分解能はとても良い。特に音の分離は見事で、その点では10万円クラスのヘッドホンと比べてですら遜色ないレベル。
細部の描写も丁寧に拾い上げている印象で、同価格帯(3〜4万円前後)では高いレベルを持っていると言っていいと思われる。
原音忠実性はやや良好な程度。繊細な描写やニュアンスの拾い上げが得意で色付けも少ない方向性だが、全体的に音の線が細く厚みのある表現が不得手。
また、楽器の本来持つ荒や痛さを上手く表現できない点が惜しい。聴き疲れしないという点では好ましいのだろうが、モニターヘッドホンとして使用する場合はきちんとその点を把握して使用しなければならないだろう。
音は非常に明瞭。透明感があり、一部の女性ボーカルや弦楽器でのバイオリン等で澄んだ表現が求められる際によく合う。
一方で鮮やかさはソースが持つ分を出すのみという感じだし、温かみも殆ど感じられない。このあたりはモニターヘッドホンらしい。
但し人の声や弦楽器等は、細部のニュアンスを拾い上げるのが上手いためか無機質さはあまり感じない。むしろ価格を考えれば上手い方と言ってよいだろう。
金管楽器は可もなく不可もなく。前述した良さはあるが鮮やかさが足りないと感じることが多い。
打ち込み系の音はやや苦手。低域の量に不足を感じることがある点と、音の厚みが不足しがちである事が要因。しかし音がもたついたりはしないこと、余計な色付けをしない事からこれくらいが好ましいと感じる人もいるだろう。
ノリの良さはあまり感じられず、それよりも丁寧さや正確さの方が目立つ印象。
最初に書いた通り全体的に音が細身で、それがこのヘッドホンの最大の特徴。この音の細さを許容できるかが評価を決めると思われる。
しかしそこさえ許容できれば基本性能は高く、実売価格を考えればコストパフォーマンスの高い機種となりうる。

装着感やその他
装着感はある意味良いと言えるが、私は欠陥品と呼びたくなるレベルでこの機種の最大の問題点だと考えている。
何が問題かというと側圧があまりにも弱すぎる。装着位置を保持する能力は皆無に等しく、イヤーカップが重力に引っ張られている力位のものではないかと感じる程。
その為に装着位置がすぐにずれてしまう事が多い。また、仰向けに横になって装着したり座っている状態でも上を向いたりすると、保持する力が全く足りずに落下する。
これは徐々にずり落ちるとかいうレベルではなく、手を放した瞬間に即時落下するレベル(耳にイヤーパッドが当たって止まる)である。
私自身は他人と比べて頭が大きめな方なので、大半の人は側圧不足に苦しむことになると思われる。側圧が強いと装着感が悪いと評されることが多いが、側圧が弱過ぎても大きな問題になるという最たる例だろう。
では、より頭が大きい人は改善されるかというと、ヘッドバンドの短さによりそもそも装着できない可能性が高まる。
どれくらい短いかというと、最大でもDENONのAH-D5000やFOSTEXのTH900の左右のバンドを最短から3目盛りほど伸ばした程度しかない。
私が過去所有した機種では、PhilipsのSHL9600とほぼ同程度と言ったところ。
イヤーパッドにあまり耐久性が無いのに替えのイヤーパッドの純正品が単品で売られていないのも問題。
但し、これはオーディオテクニカから発売されている装着径100mm前後の円形イヤーパッド(例えばW5000のイヤーパッドなど)で代用できる。取付の仕組みも同じ。
他に類似の構造をしたイヤーパッドで代用可能なものとしてはTH900や同系統のヘッドホンが挙げられる。
ケーブルの耐久性も決して高いとは言えず、私が所有している個体のL側のケーブル被覆材(分岐前)がぼろぼろになり内部の線材の大部分があらわになっている(芯線の被覆材は残っている)。
特に丁寧に扱っていたわけではないのだが、よりラフに扱い所有期間も長いHD25-1Uのケーブルが全く何ともない事を考えればやはり擁護は出来ない。
イヤーパッドの件も併せて考えれば、全体的に耐久性が低いと言わざるを得ないだろう。
作りは精度はともかくプラスチッキーで質の高さを感じさせるものでもなく、とてもチープに感じる。これが定価4万円と言っても殆どの人は信じないレベル。
揶揄されることの多いHD650やHD25-1Uの方がまだ高級感があると感じる程。
但しその事が240gという軽量さを生んでいるとも言えるので、音が良ければ気にしないという人にとっては問題ないだろう。

その他
密閉型としては、音漏れ防止、遮音性共に非常に悪い。前述の側圧の弱さが大きく影響しているものと思われるが、ハウジングを触ると明らかに振動しているのが感じ取れるのでそれだけではないだろう。
その音の傾向と相まって、非常に人を選ぶ機種。特にポータブル用途や屋外での使用を考えている人はやめた方が無難。
可能であれば一度試聴するか、最低でも装着感を確認してから購入する事をお勧めする。もっとも、試聴機を置いている店舗が存在するか疑問ではあるが。
ケーブルは両だしで着脱不可。端子は3.5mm3極ミニプラグで6.3mmへの変換アダプタが付属する。
私はまだ日本で販売されていない時期にAmazon.comから個人輸入したために、現在では仕様等が変更されている可能性はある。
音量はかなり取りにくく、AURALiC Taurus MK2で駆動した場合HD650よりも30度分ほど音量を上げる必要がある(例えばHD650で10時の位置とGMP450PROの11時の位置がほぼ同じ音量)。

再生環境
PC→Lynx HILO(USB接続、ASIO2.0)→AURALiC Taurus MK2(STD Mode) or マス工房 model 370 CP










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GMP450PRO 投稿者:take 投稿日:2018.2.17

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