第75回 スーパーストレッチ・ヘッドホンカバー mimimamo
ヘッドホンのイヤーパッドは、直接肌に触れるという意味では衣服のようなもので、本来であれば毎日のように洗濯したり交換したりするのが望ましいと思います。しかしながらそれを実行している人はほとんどいないのではないでしょうか。これは、あまり気軽に洗濯したり交換したりできるものではないという面も影響しているでしょうが、やはり衛生面で問題があるように思われます。
そこで対策として考えられるのが、イヤーパッドにカバーを被せるという方法です。これまでにもヘッドホンのイヤーパッドカバーというものは一応売られていましたし、自作する人もいました。ただ、音質含めきちんと開発されたものはなかったように思います。
そこに今回、mimimamoという(きちんと作られているように見える)イヤーパッドカバーが登場したので使ってみることにしました。
画像サイズが大きいので、クリックすると別窓で拡大表示するようにしてあります。
概要
詳細は
メーカー製品ページ
を参照のこと(発売前約2週間から発売後約7週間にかけてヘッドホン対応表の情報が大幅に充実したので、今後も期待できるかもしれません)。
・極薄の生地(厚さ0.5mm)で音響にも配慮したイヤーパッドカバー。
・洗濯して繰り返し使用可能。
・直径約70mm(パッケージ表示の値、実測でもほぼ同じ寸法)、円形のイヤーパッドの場合には直径約65〜90mmに適合。
・抗菌防臭加工、SEKマーク認定。
・地球にやさしい繊維「テンセル」を使用(ボディの生地の89%)、売上の一部は植林活動に寄付。
・Made in Japan。
0.5mmという厚さがどれくらいかと言うと、普通に見ると向こう側が透けたりはせず、蛍光灯にかざすと向こう側がだいぶ明るく見える感じです。
普通の布を基準に考えるとかなり薄い印象を受けますが、強く引っ張っても破れたりしませんし、見た目としても縫製等の作りは悪くないと思います。
音質
試しにいくつかのヘッドホンに装着して音を聴いてみましたが、基本的には音の変化は小さいように思います。具体的にどれくらいと表現するのは難しいですが、例えば純正以外のイヤーパッドに交換するよりはだいぶ変化が小さく、純正のイヤーパッドの経年劣化による音質変化と大差ないレベルだと思われます(もちろん、正確には個々の製品や劣化具合で違ってきますが)。
密閉型代表としてHD25-1、開放型代表としてRS-1についてもう少し詳しく見てみます。
・HD25-1
圧力や制動が若干落ちる印象です。HD25-1らしさが薄くなる方向性ですが、逆に言うとニュートラルに近づき聴き疲れしにくくなるとも言えます。
測定誤差レベルだと思います。HD25-1は密閉することによって低域を出している面が大きい機種なので、mimimamoで密閉度合いが下がって低域の量が減ることも考えられましたが、測定結果を見る限りあまり影響はないようです。
ただし、元々HD25-1できっちり密閉できている人ほどmimimamoで低域の量が減ると感じやすいかもしれません。
・RS-1
HD25-1と似たような変化です。ニュートラルに近づき聴き疲れしにくくなります。言い換えると、イヤーパッドをEar Pad Sに交換した音に若干近づくような印象です。
低域の量が増えています。RS-1は密閉することによって低域を出しているものとは対極にあるようなヘッドホンですが、おそらく音の抜けの良いイヤーパッドのほぼ全面がmimimamoで覆われることによって音の抜けが阻害され、低域の量が増えたのではないかと思われます。
mimimamoを装着することによってイヤーパッドが多少変形するので、その影響もあるかもしれません。
装着感
当然のことながら、デフォルトのイヤーパッドの材質がどういうものかによって、mimimamoを使うことでどう変わるかも違ってきます。
肌触りは個人の好みの差が大きいと思いますが、mimimamoは柔らかくきめ細かいため肌触りが良いと感じる人が多いのではないかと思います。ザラザラしたりチクチクしたりといったことはまったくありませんし、レザータイプの人工皮革のように肌に張り付く感じが不快ということもありません。大抵のイヤーパッドと比較すると、蒸れにくい点も長所だと思います。
ただ、こういう材質のイヤーパッドを採用しているヘッドホンはほとんどないため、慣れるまで違和感があるかもしれません。
表面が滑りやすいため、デフォルトの状態と比べるとヘッドホンがずれやすくなることが多いと思います。特にポータブル用途で使う場合には問題になるでしょう。
耳覆いサイズのイヤーパッドに使用した場合には、耳がきちんと覆われなくなってしまうため注意が必要です。
その他
「直径約65〜90mmに適合」ということになっていますが、あまり小さいとずれやすいとか、逆に大きいと被せにくかったり伸びてしまったりといったことが起きると推測されるので、実際にいくつかのヘッドホンで使ってみた印象を書いておきます。
参考にイヤーパッドの外周のサイズも載せておきますが、厳密にはイヤーパッドの外周だけでなくmimimamoを被せる本体部分のサイズや形状によって使用感が変わってきます。機種によりますがmimimamoを被せる本体部分はイヤーパッド外周より数mm程度大きいことがあります。
・ATH-A2000X(イヤーパッドの外周は110mm×108mm)
大きすぎて被せることができません。
・RH-300(イヤーパッドの外周は106mm×98mm)
使えますが、サイズがギリギリなので被せるのが難しいですし、使い続けるとゴムが伸びてしまうかもしれません。イヤーパッドの方も変形してしまうおそれがあります。
本来耳がイヤーパッド内に収まるはずのところをmimimamoの生地が遮り半耳のせのような形になるため、装着感に大きな違いが生じます。
・CUSTOM ONE PRO(イヤーパッドの外周は104mm×104mm)
微妙です。メーカー製品ページでは「装着がきつめで少し難しい」となっていますが、破れる覚悟でmimimamoを引っ張ってようやく装着できるかどうか、イヤーパッドの変形や破損のおそれがあるというのが正直な印象です。
・K181DJ(イヤーパッドの外周は90mm×90mm)
使えますが、サイズがきつめなので慣れるまで被せるのが難しいかもしれません。
装着感としてはずれやすくなる点が気になりますが、蒸れにくくなるというメリットもあります。
・RS-1(イヤーパッドの外周は80mm×80mm)
イヤーパッドの材質・形状が特殊なので、被せるのが少し難しいです。イヤーパッドが破損しやすいものなので注意が必要です(特に経年劣化が進んでいる場合)。ゴムの部分をしっかり奥まで被せれば問題なく使えると思われますが、側面で止めて使い続けるとイヤーパッドが変形してしまうと思います。
ザラザラしたイヤーパッドが肌に触れなくなるので、肌触りが良くなります。
・P5(イヤーパッドの外周は74mm×56mm)
特に被せにくいということもなく普通に使えます。P5はイヤーパッドが縦長ですが、mimimamoは柔軟なので大丈夫です。ただし、mimimamoがケーブルと接触するため、長期間使い続けるとその部分が傷みやすいかもしれません(これはケーブルと接触する他のヘッドホンについても言えます)。
・HD25-1(イヤーパッドの外周は70mm×70mm)
特に被せにくいということもなく普通に使えます。ただ、これより大きくなると被せるのが難しくなってきそうな気はします。
装着感としてはずれやすくなる点が気になりますが、蒸れにくくなるというメリットもあります。
・ST-90(イヤーパッドの外周は64mm×64mm)
普通に使えますが、少しゆるい感じです。
・ZM-DS4F(イヤーパッドの外周は60mm×60mm)
使えますが、少しだぶつく感じで、場合によっては外れやすいといった問題が生じるかもしれません。
・PortaPro(イヤーパッドの外周は50mm×50mm)
小さすぎてきちんと固定できなくなるため、使えないレベルだと思います。
基本的には、耳のせサイズの中でも小さいヘッドホン(例えばPortaPro)や、耳覆いサイズの中でも大きいヘッドホン(例えばATH-A2000X)では使えないと考えた方が良いと思います。装着感や使い勝手について厳しく見るなら、直径70mm前後の耳のせサイズのヘッドホンにのみ使えると考えた方が良いかもしれません。
また、上記はすべて新品に近い状態のmimimamoを使用しています。使い込んだり洗濯したりすると多少変わってくると推測されます。
こんなところでしょうか。
当然のことながらあらゆるヘッドホンに使えるものではありませんし、場合によっては装着感や使い勝手が悪化したりすることもありますが、そのあたりは現実問題として致し方ないように思われます。
機能としては、薄いのでイヤーパッドに付着する汚れを100%シャットアウトすることはできないと思いますが、ないよりはずっとマシでしょう。
汚れを防ぐだけでなく肌との摩擦も防げるため、そういう意味でもイヤーパッドの劣化を多少遅らせることができるのではないかと推測されます。
また、「音質は良いがイヤーパッドの肌触りが気に入らない」というヘッドホンがある人にとっては、その肌触りを変えるために使うという用途も考えられます。
カラーも5色あるので、気分や服装に合わせて使い分けたいという人にもお薦めです。
※上記の内容はMサイズのものです。その後Lサイズが発売されました。
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