第74回 A496plus type1+XRFD試聴レポ
概要
詳細はメーカー製品ページを参照のこと。
高性能ヘッドフォンアンプ基板A496plus type1とクロスフィーダー基板XRFDを使用した組み立て済み品。入力端子はRCA×1系統。出力端子はヘッドホン×1。背面にクロスフィーダー機能切り替えスイッチがある。その他には特筆すべき機能はない。なお、本製品を実際に使用できる状態にするためには他のパーツも必要になってくるが、今回使用したものは下記の通り(一部)。
ケース タカチ電機工業 CD-240SB
ボリューム 東京コスモス電機 RV24YG型 二連VR 50kΩ
つまみ MAV B-25
ヘッドホンジャック NEUTRIK NJ3FP6C-BAG
ACアダプタ 秋月電子 GF12-US2405
本レビューは、あくまで上記パーツを使用した一例でのもの(A496plus type1とXRFDを組み立てたとしても、使用するパーツを変更することによって本レビューとは大幅に異なる点も出てくることに注意)。
サイズはやや小さめで、重量も軽め。外観は地味で飾り気がない。
音質
癖のない音。入力された信号をそのまま増幅するような印象。味付けや個性はほとんど感じないが、極端に無味乾燥でつまらないということはない。密度は普通で、特に粗は感じない。輪郭は普通からやや明確。質感はニュートラルだが、どちらかと言うと硬く冷たい。立ち上がりはなかなか良い。
周波数特性はフラット。低域・高域ともに質的にも量的にも癖がない。ただ、低域はあまりぼやけたりしないし高域も変に目立つことがないので、そういう意味で中域が最も聴こえてくると言えるかもしれない。情報量は十分ある。音の分離にしろ微細な表現にしろ特に不満は感じないレベル。空間表現は特に広くはないが、明確で把握しやすい。残響音や伸びは普通からやや控え目。電源部が弱いと低域の制動等に問題が出ることも多いが、本機はそういった点はほとんど気にならない。
基本的にはヘッドホンを選ばない機種だが、硬い音を鳴らすヘッドホンやエッジのきついヘッドホンだとやや聴き疲れしやすい印象。
A496KIT+DCfltr-spltrHCKITと良く似た音だが、若干粗がなく音楽鑑賞向きの濃密さや温かみが感じられる。
上記の内容は、クロスフィーダー機能OFFでのもの。クロスフィーダー機能をONにすると、左右の音がかなり前に集まる。通常のステレオ音源がモノラル音源になるとまでは言わないが、通常のステレオ音源のつもりで聴くとそれに近い印象を受けることがある。
例えばHead Amp 2/MkII SEのクロスフィード機能と比べると、音が前に集まるという意味では変化が大きい。通常のステレオ音源ではHead
Amp 2/MkII SEの方が違和感が気にならないが、Bill Evansの「Waltz for Debby」のように古いジャズで極端に音が左右に分かれている音源ではA496plus
type1+XRFDの方が自然で好ましく感じられることがある。
また、クロスフィーダー機能OFFのときと比べて明らかに低域の量が増える。
これらの点が原因なのか、全体としてそれなりに違和感がある。元の音源をできるだけいじらずに前方定位を実現したいと考える人にはあまり向かないかもしれない。とは言え、頭内定位を解消するために音源を著しくいじるようなDSPと比べると劣化は小さい。
一般的なステレオ音源の頭内定位解消の手段としてはそれほど有効ではない印象だが、違和感が気になりにくい音源ならある程度効果的に使えるだろう(個人差はあると思われる)。
なお、クロスフィーダー機能のレベルは内部の半固定抵抗によって調整することができる。上記はレベル最大でのもの。最小だとかなり効きを抑えることができるし、それに応じて違和感も軽減される(ただし、それでもゼロにはならない)。クロスフィーダー機能の効きという意味では中間くらいが実用的かもしれないが、前述の問題点は程度の差こそあれそのまま当てはまる。
その他
ボリュームノブの直径は約20mm、普通からやや小さめに感じるが、実用上問題ないサイズ。タッチはやや重めで、スムーズに意図した通りに回ってボリューム調節ができるというのとは少し違う感じがする。若干ガリノイズがあるが、ほとんど気にならないレベル。ボリューム8時くらいまで音が左よりになる。音量の取りやすいヘッドホン(例えばSuper.fi 5 Pro)を使おうとするとかなり厳しい。ゲインはやや大きめで、音量の取りやすいヘッドホンを使用する際には細かい音量調節が多少やりづらいように感じる。
無音時のホワイトノイズは若干あるが、実用上ほとんど問題にならないレベル。音量の取りやすいヘッドホン(例えばSuper.fi 5 Pro)を使うと、ボリューム最小ではノイズがほとんど聴こえず、音量を上げるに従って大きくなり最大だとかなり気になる音量になるが、ボリューム実用域では気にならないレベルで音楽を鳴らすとほとんど聴こえない。
電源をON/OFFする際にプツッというノイズがわずかに発生するが、ほとんど問題にはならないレベル。クロスフィーダー機能を切り替える際にノイズは発生しない。
発熱はほとんどない。電源ランプは赤色で明るさは普通。
付属品
無し
※本製品は半田付けや配線の手際が完成度に影響する恐れがある点に注意。
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スペック
形式 | 再生周波数帯域 | 全高調波歪率(THD) | S/N比 |
Solid State | 20Hz〜40kHz | 0.001% | 100dB |
推奨負荷インピーダンス | 外形寸法 | 重量 | 参考最安価格 |
- | 132.6(W)×256(D)×45.6(H)mm | 856g | 14820+4630円 |