第46回 iVHA-1試聴レポ

概要
 詳細はメーカー製品ページを参照のこと。
 オペアンプと真空管のハイブリットヘッドホンアンプ。入力端子はRCA×1系統のみ。ヘッドホン端子は標準サイズが1個。
 ゲイン切替スイッチやスルーアウト端子等はなく、最低限の機能といった感じ。特筆すべき機能は何もない。
 サイズは普通からやや小さめで重量も軽い。外観は黒一色で形状もそれほど癖はなく、比較的一般受けするだろう。作りはしっかりしているが、真空管がぐらつくのが多少気になる。

音質
 非常に明瞭で澄んでいる。明るい女性ヴォーカルやブラスの表現が実に瑞々しい。男性ヴォーカル等の中域は低いところが削られて高めの音になる。ヴァイオリンは心地よさよりも生々しさが際立つ。曇っている感じやぼやけた感じが皆無。味付けは少なくソースの持っている温かみや艶っぽさも必要以上に出さない感じ。密度はそれなりに高いが厚みはそれほどでもなく、少し凝縮されたようなタイトな密度の高さ。粗はない。輪郭は明確。質感は硬めで、低域が少ないこともあり多少冷たい印象を受ける。立ち上がりはそこそこ良い。
 周波数特性は高音より。ヘッドホンアンプの周波数特性の違いというのは、普通ヘッドホンの機種の違いによる音の違いを覆すことはほとんどないが、本機についてはそういうことが起こり得る。例えば、ATH-AD2000とHD650ではHD650の方が低音が豊かだが、ATH-AD2000+HD-1L Limited Edition(RC1)とHD650+iVHA-1では、前者の方が低音が豊かに感じる。質的には、低域はぼやけたりもたついたりすることがなく、高域は明るく鮮やか。シンバル等はかなり金属的かつ刺激的。ただし粗があることに起因する痛さはない。情報量は十分ある。音の分離や微細な表現はかなり良いが、例えばヴォーカルのサラサラした感じやチェロの表面の産毛のような質感は、あまり豊かには出してくれない。このあたりは、HP-DX1000やMDR-SA5000のような最近の国内ヘッドホンメーカーの音作りに似た部分があるように感じる。空間表現は多少変わっているが、なかなか良い。左右の広がりが良く時としてセンターががら空きに感じることもあるが、基本的に一歩引いた所から眺めるような広さ・見晴らしの良さがある。この種の空間の広さは、空間の広さに対して音の量が足りないような不満を引き起こすことがあるが、本機でも多少そういう印象は受ける。そういう点でAT-HA2002とは対照的。考えてみると、低域が少なく音の圧力や迫力に欠けるという点でもAT-HA2002とは対照的。残響音はあっさりだが、綺麗に音の粒が消える様が感じられる。澄んだ残響音と言って良いだろう。伸びはあまり良くない。
 相性の良いヘッドホンは、例えばHD650のような低域が豊かで音の柔らかい機種。低域が減衰してぼやけた感じが減り、全体のバランスが良くなる。逆に相性が悪いのは、例えばMDR-SA5000のような低音が少なく音が硬い機種。その傾向が顕著になりバランスが悪くなる。ただし、長所を伸ばすという意味では明瞭で音場が広い機種が合う面もあり、明瞭さと音場の広さという意味に限定すればMDR-SA5000はかなり良いと言える。また、透明感という意味でAH-D5000と合わせると際立った魅力を感じる。全体のバランスも良い。
 オールマイティーな1台を求めている人にはおすすめできないが、2台目以降のヘッドホンアンプとして個性的な機種を求めている人には良い選択肢だろう。

その他
 ボリュームノブの直径は約22mm、普通からやや小さめに感じるが、実用上問題ないサイズ。ギャングエラーやガリノイズはまったくない。ゲインは平均的なヘッドホンアンプより小さいように感じる。音量の取りづらいヘッドホンを使用する場合、ボリュームを12時以上に上げることも有り得る(普通のヘッドホンアンプでは12時以上まで上げることはあまりない)。そのため、小音量でのボリュームコントロールがしやすく、音量の取りやすいヘッドホンを小音量で使用する際にも困ることがない。タッチは普通で、特に重くもなく軽くもないが、もう少し滑らかに回ってくれるとなお良かっただろう。
 また、無音時のノイズが非常に小さい。インピーダンスが小さく感度の大きいヘッドホン(例えばSuper.fi 5 Pro等)を使用してもほとんどノイズが感じられない。その点については最高レベルと言える。
 電源を入れるときにやや大き目のノイズがのるので、ヘッドホンを外しておいた方が良いだろう。電源を切るときにも若干ノイズがのるが、電源を入れるときに比べるとかなり小さい。
 発熱はそれなりにあるが、長時間使用しても触れないほど熱くはならない。電源ランプは赤色で、明るさはやや暗め。それ以外に真空管部が青色にライトアップされるが、こちらは明るい。

付属品
電源ケーブル







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スペック

形式 再生周波数帯域 全高調波歪率(THD) S/N比
Hybrid 20Hz〜20kHz 0.025% 112dB
推奨負荷インピーダンス 外形寸法 重量 参考最安価格
8Ω〜600Ω 147(W)×244(D)× 96(H)mm ※1 1.75kg ※2 112800円

 今回は、izo社製ヘッドホンアンプiVHA-1を2週間ほどお借りすることができましたので、その試聴レポです。

※1 取扱説明書の値。メーカーサイトでは「147(W)×230(D)× 100(H)mm」と記載。実測は取扱説明書の値に近い。
※2 取扱説明書の値。メーカーサイトでは1.76kgと記載。

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