第38回 HDA-5210試聴レポ
概要
詳細はメーカー製品ページを参照のこと。
入力端子はRCA×2系統。出力はヘッドホン端子が2個で、片方は電圧出力、もう片方は電流出力となっている。世界でも珍しい電流出力を備えたヘッドホンアンプ。
ヘッドホン端子は別個にボリュームを変えたりはできない。本体前面には電源スイッチ、ボリューム、インプット切り替えスイッチがある。本体背面には電圧出力と電流出力それぞれについてゲイン切り替えスイッチ(0dB/-10dB)がある。
サイズはやや大きいが重量はそれほど重くない。外観は、質感的には悪くないのだが、独特なブラウン基調の配色のためあまり万人受けするとは言えないだろう。
音質
本機は使用するヘッドホンによってかなり音が変わるため、以下にまずHD650を使用した際の音について述べることにする。
非常に自然な鳴らし方。比喩するなら穏やかな清流のような音。繊細で艶があり、それでいて湿っているような感じは少なく爽やかで透明感がある。ありとあらゆる生楽器を美しく再生してくれる能力は素晴らしいの一言。おとなしいのに退屈しない、音楽的と言うべきか、生演奏の感動を伝えてくれるような鳴らし方。特に室内楽やヴォーカルものが得意なように感じる。味付けは若干艶が乗る傾向だが決して不自然ではない。密度は特別高いわけではないが十分な能力は持っているし、繊細さや透明感との両立という意味では素晴らしいと言わざるをえない。質感は柔らかめだが輪郭がぼやけたりすることはない。音の立ち上がりの良さ、圧力、締まりといったものは普通。
周波数特性はかなりフラットだが、若干低域が強め。低域も高域も良く伸びている。低域はどちらかと言えば柔らかめの質感だが、それほどぼやけたりはしない。高域はやや鮮やかめの風合いだが、硬く尖っていて痛く感じたりすることはなく、むしろかなり聴きやすい。情報量はかなり豊か。音の分離は十分なものを持っているが、それでいて全体のまとまりは損なわない。一つ一つの音の微細な表現は見事。空間表現は非常にうまい。二次元的にも三次元的にも広く、アンプによって音場表現がこれほど良くなるのかと驚かされるほど。残響音は適度からやや豊か。伸びは良く、ヴァイオリン等の弦楽器でいかんなく力を発揮する。
以下にヘッドホンごとに気づいた点を述べる。
ATH-AD2000、edition7、MDR-SA5000はかなりフラットな印象であるのに対して、DT990PRO、HD650、PROline2500、RS-1は低域が質・量ともに強い印象を受ける。また、K701はやや高域が強くなる。このあたりはインピーダンスの周波数特性によるのだろう。
ATH-AD2000では、AT-HA2002やHead Amp 2/MkII SEと違って低域の薄く締まりのない感じが改善されなかった(ある意味こちらが自然な姿なのかもしれないが)。DT990PROは特に低域の増幅が大きく、HA-1Aのようなバランスになる。基本的に上品な鳴らし方のため、K701のような元々上品な機種は刺激に欠けると感じることが多い。MDR-SA5000のような硬めの音を鳴らす機種は柔らかく聴きやすくなる。
なお、上記の内容はすべて電流出力でのもの。電圧出力でも大きな音の傾向は変わらないが、電圧出力では電流出力ほどヘッドホンによる違いは発生しないようだ。そのため、電圧出力と電流出力の音の違いはヘッドホンによって異なってくる。
総合的に見ると、私が所有しているものでは、HD-1Lが最も近いように感じる。ただし、使用するヘッドホンによってはAT-HA2002のようなエネルギッシュな感じや、HA-1Aのようなウォームさを感じることもある。
なお、旧バージョンを店頭試聴した際の印象やネット上のレビュー等から考えると、旧バージョンと新バージョンはある程度音が違うようだ。
その他
ボリュームノブの直径は約35mmとやや大きめで、奥行きもかなりあるため使いやすい。ガリノイズはないが、ごく小音量では若干ギャングエラーが感じられる(実用上はまったく問題ないレベル)。ボリュームのタッチは、重くも軽くもなく使い勝手が良い。再生中にインプット切り替えスイッチやゲイン切り替えスイッチを切り替えても、ノイズ等は発生しない。電圧出力と電流出力でゲインが異なり、電流出力の方がかなりゲインが大きい。また、電流出力で0dBの設定だとゲインが高すぎてボリューム調整に難があるし、ボリュームを最小にしてもそれなりの音量で音が出る。
本体の発熱はかなりあるが、長時間使用しても触っていられないほど熱くなったりはしない。電源ランプは橙色で、あまり明るくはない。また、電源を入れてから数分間かけて徐々に音が出るようになる仕様になっている。
SATRIアンプでしかも電圧出力と電流出力を備えているという、ある意味ほかに代わるもののないアンプ。
付属品
電源ケーブル(製品で付属するかは不明)
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スペック
形式 | 再生周波数帯域 | 全高調波歪率(THD) | S/N比 |
SATRI | - | - | - |
推奨負荷インピーダンス | 外形寸法 | 重量 | 参考最安価格 |
8Ω〜600Ω | 235(W)×345(D)× 76(H)mm | 2.6kg | 129000円 |
今回は、Bakoon Products製のヘッドホンアンプHDA-5210をお借りしたので、その試聴レポです。形式はHPAレビューと同じで行いたいと思います。
なお今回お借りした試聴機は2006年にマイナーチェンジした後のバージョンで、電源は出川式電源に変更、ボリュームはアッテネータから通常のカーボン抵抗のものに変更になっています(カスタマイズでアッテネータへの変更は可能)。その他にも細かい変更点があるようです。詳細はこちらをご覧下さい。