第34回 Model6試聴レポ

・概要
 詳細はメーカー製品ページ(http://www.icl.co.jp/audio/Model6/M6-1.htm現在リンク切れ)を参照のこと。
 入力端子はRCA×1系統、USB×1系統。出力はヘッドホン端子(標準サイズ2個)以外に、RCAが1系統、S/PDIFが1系統ある。ヘッドホンアンプとして以外に、プリアンプとして、或いはUSB入力から取り込んだデータをS/PDIF形式で出力する用途で使用できる。
 ヘッドホン端子は別個にボリュームを変えたりはできない。ボリュームは22接点抵抗切替え式アッテネータを使用している。本体前面にインプット切り替えスイッチがあり、LINEとUSBを切り替えるようになっている。
 サイズはやや大きく重量も重め。ケースが1.6mmの鋼板製ということなので、これがかなりのウェイトを占めているのだろう。外観は業務用機器といった感じで、無骨で飾り気がない。

・音質
 真空管らしい柔らかい音。良く言えばスケールが大きく、悪く言えば大味な鳴らし方。聴き始めはメイン以外の音がかなり主張してくるのが特徴的に感じたが、50時間ほど鳴らすとかなりならされて安定した鳴らし方をするようになる。ただ、やはりヴォーカル等のメインの音よりもサブの楽器が前に出てくるために雑然とまとまりがないように感じることがある。味付けは意外と感じられず、妙に艶が乗ったり、逆に殺ぎ落とされたりすることはない。ただし、どちらかと言えば真空管らしい風味が感じられる傾向。アコースティックギター等が気持ち良い。全体的に密度がやや薄く、粗があるように感じるのは難点。質感は柔らかめだが、それほど輪郭がぼやけたりはしない。キンキン突き刺さってくるようなヴォーカルを聴いたりしてもあまり痛くない。ニュートラルよりはやや温かめの音調。音の立ち上がりの良さ、圧力、締まりといったものにはやや欠ける。真空管らしい魅力を強烈にアピールしてくる機種ではないので、その代わりにもう少し密度の高さやメリハリのある鳴らし方等の長所が欲しかったところ。
 周波数特性はややかまぼこ。中域と中高域の間くらいが最も強いように感じる。低域は量・厚みともに必要量といった感じ。もう少し量感豊かにしっかり低い音を鳴らしてくれても良いように感じた。高域はあまり伸びない。音そのものがやや低いように感じるし、明るさや鮮やかさにも欠ける。粗もやや気になる。情報量はあまり多くない。ただし、音の分離は良く、一つ一つの音が意識しなくても分かれて聴こえてくる。微細な表現は微妙。細部がばっさりカットされるということはないのだが、しっかり描ききるような表現力には欠ける。空間表現はあまりうまくない。ただ何となく鳴らしているように感じる。しかし、この点はそもそも空間表現を求める機種ではないというのが正しいところだろう。残響音はやや豊かだが、濃密な音が広がっていく感じではなく、軽めの音が乾いた感じで響く。伸びは普通。
 相性の良いヘッドホンを選ぶのは難しい。基本的に、どんなヘッドホンを持ってきてもあまりおかしなバランスにはならない。敢えて相性の良いヘッドホンを挙げるなら、しっかりと厚みがあり、高域の粗の無い機種か。そのような機種であれば、密度の薄さや高域の粗があまり気にならなくなる。
 総合的に見て、HD53とHA-1Aの間のような音。HA-1Aほどのウォームさや力強さは感じられないが、HD53ほど冷たく冷静ではない。HD53のような粗のある感じが多少気になるが、HD53と同様全体のバランスの良さもある。
 RCA入力とUSB入力の音の違いは微妙。基本的には同じ傾向だし、かなり近い音を鳴らす。違いがあるとしても、再生機器等による違いの方が大きいように感じる。また、一般的なCDプレーヤーからRCA入力を通して再生するのに比べて、USB入力の方が音量が取りづらいように感じる。手持ちのノートパソコンと本機をUSBで接続し、音量の取りづらいヘッドホンで録音レベルの低いソースを聴くと、ボリューム最大でちょうど良いくらいの音量になることがある。かと言って、音量の取りやすいヘッドホンで録音レベルの高いソースを聴くと、細かい音量調節に難がある。適合負荷が16Ω〜250Ω推奨なのはこの辺りも関係あるのかもしれない。

・その他
 ボリュームノブの直径は約38mmとやや大きめ。ボリュームはアッテネータで段階的にしか音量を変えられない上、ゲイン切り替えスイッチ等もない。そのため音量の取りやすいヘッドホンでは細かい音量調節にやや難がある。ガリノイズやギャングエラーはまったく感じられないが、再生中にボリュームを12時以上まで上げると、ボリューム変更時にわずかにプツプツとノイズが乗ることがある(実用上はまったく問題ないレベル)。ボリュームのタッチは、アッテネータなので段階的。ステップごとにしっかりカチカチと切り替わる感じで、多少重め。好みが分かれるだろうが、個人的にはこのボリュームは10万円レベルのヘッドホンアンプに使われているボリュームにまったく引けを取らないように感じる。使い勝手含めて好印象。
 USB入力時、PCに相当の負荷をかけても音飛び等の発生は見られなかった。また、再生中にインプット切り替えスイッチで入力を切り替えても、ノイズ等は発生しない。
 本体の発熱は多少あるが、長時間使用しても素手で触れる程度で、あまり気にならない。電源ランプは橙色で、スイッチ部が光る。この辺りも業務用機器のような印象を受ける一因だろう。明るさは、特に明るくはないレベル。操作はすべて前面で行えるので使いやすい。
 価格の割に、真空管式、USB入力有り、アッテネータ使用等、多機能で「売り」が多い上、大きな欠点もない機種なので、色々な楽しみ方があるだろう。

・付属品
電源ケーブル
USBケーブル







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スペック

形式 再生周波数帯域 全高調波歪率(THD) S/N比
真空管 14Hz〜55kHz(-3dB) - -
推奨負荷インピーダンス 外形寸法 重量 参考最安価格
16Ω〜250Ω 300(W)×260(D)× 100(H)mm 4.8kg 49350円

 今回は、Softone社製の真空管ヘッドホンアンプModel6を2週間ほどお借りすることができましたので、その試聴レポです。形式はHPAレビューと同じで行いたいと思います。

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