第31回 iHA-1試聴レポ

 今回は、izo社製のデジタル接続可能なヘッドフォン専用アンプ“R.spec”「iHA-1」を2週間ほどお借りすることができましたので、その試聴レポです。


・概要
 使用しているパーツや仕様等、izoのホームページの製品紹介ページに詳しく公開されているので、そちらを参照のこと。電源はACアダプタで電源ケーブルの交換ができないのが難点だが、今後発売予定の高品位電源ユニットiPSU-1に対応していて電源面での改善の余地はある。
 サイズはW147mm x H43mm x D180mm、重量は1.1kgと非常に小さくて軽い。デザインはシンプルで一般受けしそう。作りはかなりしっかりしていて、小型・軽量の割には高級感があるし、安心して使える。
 入力はアナログ、オプティカル、コアキシャルの3種類。贅沢を言うならUSB入力も欲しかったところ。
 前面にデジタル/アナログ入力切替スイッチとゲイン切替スイッチがあり使いやすい。
 省スペースで高音質を求めるなら、悪くない機種だと思われる。

・写真

・音質
@アナログ入力時(CD3300使用、慣らし前)
 極めて普通の音。周波数特性はかなりフラットだが、若干低音より。低域も高域もあまり伸びない感じ。低域はややもたつく印象だし、高域はならしたようにとがった感じがしない。
 特別締まっているとかぼやけているとは感じないが、どちらかと言うと線が細いと言うよりはやや太めで落ち着いた鳴らし方。明るさや透明感は無く、地味。音に粗はない。残響音や音の伸びは普通。情報量は必要量あるが、あまり多いとは感じない。小音量から大音量まで破綻の無い鳴らし方。
 色んな意味で可もなく不可もなく、無個性。開発コンセプトにもあったようだが、ヘッドホンを選ばない。ATH-AD2000、DT990PRO、edition7、HD650、MDR-SA5000、RS-1で様々なジャンルの曲を聴いてみたが、各ヘッドホンの特徴を素直に出しつつ、それでいてあまり極端な音にはならない。ただし、単純に10万円のヘッドホンアンプとして見ると、音に価格分の価値・魅力は無いように感じる。

Aアナログ入力時(SA-15S1使用、慣らし前)
 基本的な方向性はCD3300と繋いだときと同じ。プレーヤーの能力によってやや全体の情報量が増えていることを除いて、大きな違いはないように感じる。
 一番気になるのは低域のもたつきで、ソースやヘッドホンによっては曇りのようにも感じる。AT-HA2002やSA-15S1直挿しのような明瞭さや繊細さがない。ポップスやロックを楽しめないように感じて気づいたのだが、音の立ち上がりもあまり良くないようだ。ややもっさりしている印象を受ける。
 他に新しく気づいたこととしては、何故か稀に特定音源でわずかにノイズが乗ることがある点。他のヘッドホンアンプではノイズが乗らないこと、複数のヘッドホンで同様の現象が見られること、ケーブル等に原因がないことを確認。
 また、CD3300の時と同様ATH-AD2000、DT990PRO、edition7、HD650、MDR-SA5000、RS-1で様々なジャンルの曲を聴いたが、DT990PROで特に音の違いが明確であるように感じた。してみると、やはりbeyerdynamicのヘッドホンはアンプによって音がかなり変わるのかもしれない。DT990PROではかなり低音よりになるように感じられる。普通はかなり刺激的な高域もかなり押さえられる。一番相性の良いヘッドホンは、個人的にはMDR-SA5000のように感じられる。MDR-SA5000のローエンド不足をかなり補ってくれるし、音の硬さもやわらぐ。MDR-SA5000はソースやヘッドホンアンプによっては密度に欠けスカスカで遠くで音が鳴っている迫力のない音になるが、その点も改善される。ただし、MDR-SA5000の長所である分離の良さと特徴的な空間表現を楽しみたい人には向かないかもしれない。

Bデジタル(オプティカル)入力時(CD3300使用、慣らし前)
 アナログ入力と極端な違いは無い。やや明るく情報量が増えて見通しが良くなる印象。低音のもたつきや音の立ち上がりの悪さも若干改善されるようだ。これならかなり癖のないヘッドホンアンプとして、安価な再生環境からでもデジタル入力で接続できるヘッドホンアンプとして、悪くない印象。
 これまで同様、ATH-AD2000、DT990PRO、edition7、HD650、MDR-SA5000、RS-1で様々なジャンルの曲を聴いてみたが、やはりヘッドホンを選ばない。
 また、稀に特定音源でわずかにノイズが乗ることがある点は、デジタル入力でも変わらなかった。

Cデジタル(オプティカル)入力時(CD3300使用、慣らし後)
 使用時間は慣らしを含めて150時間ほど。デフォルトということで、デジタル入力(角型光)で使用したときの感想。
 それなりにフラットだが、やや低音より。低域も高域もあまり伸びない感じ。低域は粘りがある。高域はもう少し細く硬い表現が欲しかったところ。
 落ち着いた地味な鳴らし方で、明るさや派手さは感じられないが、安定している。情報量はあまり多くないが、必要量はあるだろう。音の分離や微細な描写能力よりも、一つ一つの音の密度の濃さが感じられる印象で、音に粗がない。音が塊になっていて、広がりや見通しが良くない。
 圧力や元気の良さがあればポップス向きの機種になったのだろうが、そういう感じではない。音が柔らかめで輪郭があまりはっきりせず、残響音や伸びもそれなりにあるため、どうしてもおとなしい印象を受ける。
 あえて得意分野を挙げるならジャズか。ウッドベースの量感やハイハットの粗のない表現はなかなか良いし、渋めの音でしっかり聴かせてくれる。
 ヘッドホンの個性を出した上で聴きやすい音を鳴らしてくれるという意味でヘッドホンを選ばない印象だが、傾向としてはDT990PROやMDR-SA5000との相性が良くATH-AD2000やHD650との相性は悪いように感じる。周波数特性的には低域がローエンドまでフラットなヘッドホンだと低域がだぼつく感じで良くないようだし、高域が弱めのヘッドホンだと本機との相乗効果でかなり高域が控え目に感じるようだ。
 初めて使用したときよりも若干クリアになった印象はあるが、基本的な方向性は変わらない。

・その他
 安価なヘッドホンアンプにありがちな無音時のノイズやボリュームのガリノイズは無いし、入力切替やゲイン切替時に異音がすることもない。ただし、ヘッドホンを接続したまま電源をON/OFFすると、ON時・OFF時共にややノイズが出る。
 ボリュームは、特に使いづらさは感じない。平均的なヘッドホンアンプより出力が小さいように感じる。音量の取りづらいヘッドホンを使用する場合、ボリュームを12時以上に上げることも有り得るだろう(普通のヘッドホンアンプでは12時以上まで上げることはあまりない)。そのため、小音量でのボリュームコントロールがしやすく、音量の取りやすいヘッドホンを小音量で使用する際にも困ることがない。
 また、電源のON/OFFがライトのブルー/レッドでしか判別できない(電源スイッチの凹凸等が無い)のは少々使いづらい上、どちらのライトも明る過ぎるように感じる。OFF時はiPSU側に電源を切り替えればライトは消えるが、スイッチが背面にあるため不便。
 ヘッドホンを抜き差しする際、本体が軽いため手で押さえなければならないが、その際に誤って電源をON/OFFしてしまうことがある。右利きの人は左手でヘッドホンアンプの左前を押さえて、右手でヘッドホンプラグを抜き差しするのが普通だろうから、一般的に見てもこの点は多少問題になるかもしれない。電源スイッチが出っ張っておらず、僅かに押しただけでON/OFFしてしまうため、余計にその危険性が高い。
 発熱は多少あるが、手で触ると温かく感じる程度で、長時間使用しても熱くはならない。ACアダプター(中国製)の発熱は本体とほぼ同じくらいで、電源OFF時も発熱し続ける。これはiPSU側に電源を切り替えてライトを消しても変わらない。

・付属品
ACアダプター







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