第96回 Kung-Fu World Champion/上原ひろみ「Brain」より

 上原ひろみは海外でも活躍するジャズピアニストです。
 今回取り上げるのは2004年発表のアルバム「Brain」の1曲目です。ピアノとシンセ両方を使用しており、シンセの癖のある音が特徴です。シンセはグニョグニョ、あるいはビヨンビヨンとでも表現すれば良いのでしょうか、ジャズだと思って聴くとギョッとしてしまうような音です。他にエレキベースとドラムスが入ってきます。主役はシンセですが、エレキベースとドラムスもしっかり主張してきます。ジャズピアニストと書きましたが、この曲はフュージョンと言った方が適切だと思います。
 ヘッドホンとしては、シンセとの相性が良いもので、この曲の躍動感を出してくれるものが良いと思います。


・1台目 DJ1 PRO(ULTRASONE)
 今回も色々聴いてみましたが、最終的にはこれに落ち着きました。シンセとの相性が良く、明るく躍動感が感じられます。DJ1 PROとピアノの相性は一般的にはあまり良くないと思いますが、今回の曲ではあまり気になりませんでした。そもそもピアノよりシンセの方がメインですし、ピアノを原音そのままに鳴らして欲しいというような曲でもないのも理由だと思います。むしろ、音の厚みと切れで魅力的に感じたくらいです。
 DJ1 PROと最後まで迷ったのがMDR-7506です。DJ1 PROと同じく切れが良く魅力的でした。最終的にDJ1 PROにしたのは、DJ1 PROの方が明るく突き抜けていた点、音場が広く各楽器がしっかり離れて聴こえた点を評価してのことです。
 他にはRP-21、HP-M1000、ATH-PRO700、ATH-ES7、K181DJ等で聴いてみましたが、DJ1 PROやMDR-7506と比べるとどれも暗くて切れが悪いように感じました。おそらくこちらの方が普通の鳴らし方なのでしょうが、DJ1 PROやMDR-7506に慣れてしまうと明らかに見劣りしてしまいます。また、イントロのシンセの表現に大きな違いが出ます。DJ1 PROとMDR-7506はグニョグニョ(ビヨンビヨン)した弾力のある感じが強く出ます。この点もDJ1 PROとMDR-7506を評価した理由です(この点を評価するかどうかは個人差がありそうですが)。
 不満点は特にありません。もう少し粗や癖のない方が良いのかもしれませんが、個人的には特に粗や癖が気になるわけではありませんでした。次は色々聴いてみるしかないと思います。

・2台目 MDR-SA5000(SONY)
 色々聴いてみた結果これになりました。
 MDR-SA5000は比較的硬く冷たい質でシンセとの相性は悪くないですし、粗や癖のなさという意味では1台目より良いです。各楽器がしっかり分離してくれる点は素晴らしいです。
 また、今回の曲は後半非常にテンポが速くなるのですが、MDR-SA5000はそのテンポの速さにまったく遅れることなく忠実にソースの速度を再現する印象です。1台目も遅れるわけではないのですが、自分のペースでノリ良く鳴らす感じで、MDR-SA5000とはまた違います。
 不満点は、1台目と比べると低域が物足りない点、面白みに欠ける点です。

・3台目 HFI-780(ULTRASONE)
 1台目と2台目の良いとこ取りができれば良いのですが、毎度のことながら難しいです。
 HFI-780を選んだのは、はシンセとの相性が良く、癖のなさという点で1台目と2台目の間くらいで、2台目の不満点も解消できると考えてのことです。
 実際聴いてみると思ったとおりの音ですが、それで1、2台目より良いかと言われると微妙です。1台目と比べるとシンセのグニョグニョ(ビヨンビヨン)した感じが出ませんし、2台目のような正確な再現でもありません。逆に言うと、1台目より癖がなく2台目より低域が出る上に面白みがあるのですが・・・・・・ 良くも悪くも1台目と2台目の中間という印象です。
 他にはHP-DX1000やATH-W1000もそれなりに楽しめたのですが、DJ1 PROとMDR-SA5000の後だと切れに欠けるように感じます。逆に言うと、切れをあまり気にしないならHP-DX1000やATH-W1000も「あり」だとは思います。


 今回は1台に絞るのは難しいように思います。個人的にはDJ1 PROが最も魅力的に感じましたが、やはり他の機種より癖があるとは思います(とは言えDJ1 PROの癖の強さを考えれば今回の曲は癖の気になりにくい傾向だとは思いますが)。正確に鳴らして欲しいならMDR-SA5000、MDR-SA5000では低域が足りないならHFI-780といった感じでしょうか。
 好みに合わせて選んでください。


試聴はこちら。













戻る





TOP > 曲別HP探索 > 第96回