第88回 ボレロ/押尾コータロー「KOTARO OSHIO」より

 押尾コータローはギタリストです。主にスティールストリングスギター(金属製の弦を使うアコースティックギター)を使います。今回の曲もそうです。アコースティックギターの奏者としては他に類を見ない知名度を誇っていると言って良いでしょう。
 今回取り上げるのは、1999年発表のインディーズアルバム「KOTARO OSHIO」の10曲目です。「ボレロ」はモーリス・ラヴェルが作曲した有名なバレエ音楽で、実に様々なところで耳にする曲です。今回の曲は、その「ボレロ」をギター1本で弾けるようアレンジしています。
 ヘッドホンとしては、ギターの弦の感触や響きがしっかり感じ取れるものが良いでしょう。また、音量に多少幅があるので、小音量でも細かいところまで聴こえ、大音量でも破綻しないものが望ましいです。


・1台目 DJ1 PRO(ULTRASONE)
 MDR-7506と最後まで迷いましたが、比較的広い空間に音が響いて広がっていくのが楽しめるのでこちらにしました。どちらもしっかりとエッジが立っていて、しかも弦の金属的な質感を出してくれる点が良いです。
 他には、RH-300、HP-AURVN-LV、MUSIC SERIES ONE、DR150、SE-A1000等で聴いてみましたが、どれも弦のエッジや金属的な質感の表現という点で前述の2台には及びませんでした。
 また、いくつか聴いていく中で気になったのは、今回の曲は原音の粗っぽさを感じさせる録音でありながら響きが豊かなので、低域から中域の響きが豊かなヘッドホンだとこもりや曇りが気になるという点です。
 不満点は、もう少し細部を丁寧に表現して欲しい点です。

・2台目 SR-325i(GRADO)
 ギターのエッジやスティールストリングスギターの金属的な質感を出してくれるもので、DJ1 PROやMDR-7506より細部を丁寧に表現してくれるもの、という条件を満たすヘッドホンはほとんどないような気がします。その一つがこれです。
 実際に聴いてみると、期待通りの鳴らし方で、素晴らしいのひとことです。特に、エッジがしっかり立っているのに不要な粗がない点は、GRADO以外のヘッドホンではなかなか得られない長所です。
 ちなみに、一応RS-1でも聴いてみたのですが、エッジや金属的な質感の表現という点ではSR-325iの方が良いです。エッジや金属的な質感よりも響きを楽しみたいなら、RS-1の方が良いと思います。両機種とも前述のこもりや曇りがまったく気にならない点は共通の良さです。
 不満点はありません。無理やり挙げるならSR-325iの音でDJ1 PROのような音の広がりがあればなお良いということくらいですが、それは無理だと思います。

・3台目 DT660 Edition 2007(beyerdynamic)
 なるべく条件に当てはまるものを探した結果、これになりました。
 エッジはしっかり立っていますし、SR-325iより音の広がりが楽しめます。金属的な質感はSR-325iほどは出してくれませんが、平均以上には出してくれると思います。また、弦を爪弾いた瞬間の細部の表現という点ではある意味SR-325i以上です。原音に近いのはSR-325iだと思いますが、細部を抉り出すように細かく表現して欲しいならDT660 Edition 2007以上の機種はそうないと思います。


 今回は総合的に見てSR-325iが最も良かったと思いますが、DJ1 PROやDT660 Edition 2007もそれぞれ魅力的でした。短絡的にSR-325iを選ぶのではなく、他の機種も是非聴いてみて欲しいと思います。
 なお、今回は弦のエッジや金属的な質感を重視して選びましたが、心地よく聴きたいというなら選ぶ機種がだいぶ変わってきます。エッジと心地よさの両立ならRS-1やDT880が良いでしょうが、単に心地よく聴きたいならHD650等多くのヘッドホンが選択肢に挙がってくると思います。また、細部の表現ならSTAXがかなり良いです。STAXはエッジが立っていないと思われているふしがありますが、不要な粗がないだけでギターのエッジは立ててくれます。線が細く繊細すぎる面はありますが、その点さえ気にならないなら有力な候補になると思います。今回選んだ機種だと、DT660 Edition 2007に近い印象です。
 好みに合わせて選んでください。













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