『再生環境、アクセサリー』
VGN-FZ50B(ノートPC)→CARAT-TOPAZ(DAC)→HD53N(HPアンプ)
TITE-35S(TAOC)、NOISE HARVESTER(PS Audio)、OCB-1 ST(オヤイデ電気)

『所有ヘッドホン』
AH-D7000、ATH-W1000X、HP-DX1000

※100時間使用してのレビューです。
※本機はバランス型のため、通常のヘッドホンアンプでは使用できません。
『音の特徴』
ほぼフラット。
高音は線が太めで、滑らかではあるが、繊細さや艶に欠ける。聴きやすいが、適度な刺激もある。
中音はかなり厚みがある。透明感は今一つだが刺激は少なく、心地良い滑らかさがある。
低音は厚く、量感も多い。ローエンドはしっかり出ている。締まりは良くない。

音の立ち上がり・立ち下りは、不満はないレベル。音の分離は価格と、音の厚みを考えるとなかなか良い。
しかし、音の細部を聴かせる能力はもう一つ。音がやや曇っているし、音が分離しきれないせいか篭りも感じる。
残響成分は出ているのだろうが、音の厚みに隠れて聴こえにくいところがある。

温かみがあり、滑らかで柔らかく、非常に聴きやすい音。重厚で、落ち着きのある表現が上手い。
反面、艶や透明感が今一つだし、スピード感もやや物足りないので、地味な音でもある。

『音場』
頭内定位は気になる。これは音が頭部に近いところで鳴るだけでなく、音の厚み、音の曇り、あまり高くない分離能力が原因。
左右の広さ、奥行きはそれなり。音の遠近感や立体的な表現は、なかなか良い。

『相性』
本機は万能型で、楽器の相性の差はそれほどない。あえて言うなら、低音〜中音楽器が上手い。
バスドラムは重量感があり、ピアノ、ヴァイオリンなども厚みのある滑らかな音を鳴らしてくれる。
打楽器やハイハットなどは、スピード感や金属的な質感が足りないと言える。

ボーカルは男性、女性ボーカルともに非常に上手い。厚みがあり、温かみと滑らかさが心地良く、耳に障る刺激がほとんどない。
特に男性の声は素晴らしい。十分な厚みがあり、しっかりした低い声を聴かせてくれる。上擦ったり、明るく聴こえることは全くない。
女性の声は、刺激の少ない滑らかな音。サ行の擦れも自然な質。短所は、艶がやや不足していて、乾いた印象があることぐらい。
曇りはあるものの、男性、女性ボーカルをバランス良く聴かせる能力は、AH-D7000に次ぐNO.2。

『その他』
本機は音量が取れすぎる。他の手持ちのヘッドホンとの音量差は10dB以上。これは長所ではなく、短所だと思う。
私はPCを再生機にしているため、再生ソフト(Frive Audio)でも音量を下げられるが、最低限下げた状態でも録音レベルの高い音源だと、
アンプのボリュームをギャングエラー付近まで、絞った状態にしなければならない。

遮音性は悪いが、音漏れ防止は非常に良い。側圧は弱め。ただ、本体が軽く、イヤパッドの性質もあってずれにくい。頭頂圧も気にならない。
イヤパッドの感触は良い。内側がへこんでいて、耳を包み込むような独特の形状。このため、耳にぴったり付着する感覚がかなり気になる。
また、イヤパッド全体はさほど大型ではないため、側圧が弱いわりには、耳を押さえつけられている感じがする。

上下左右の角度調節はできない。ヘッドバンド調節は固く始動がしにくい。そして、力を入れると一気に動くため扱いづらい。
黒一色のスライダーには凹凸もなく、メモリすら印刷されてないため、とにかく微調整がしにくい。

ケーブルやプラグはかなり重く、太い。ケーブルは合流前の部分でさえ約3mm、合流後(皮膜された二本のケーブルを、そのまま引っ付けてある)は倍の約6mm。
合流前は単純に太いだけだが、合流後はその太さに加えて幅までも広くなり、見た目はまるできし麺である。
この重さとケーブルの短さ(2m)のため、椅子などに座って使用する場合は、本体がケーブルに引っ張られる感覚が気になるだろう。
タッチノイズが非常に大きいのも厄介。欠点ばかりのようだが、このケーブルは絡まったりしないし、癖も付きにくい。

外観は価格のわりに安っぽい。しかし、ベースがHP-53であること、バランス化のためのドライバーの選定、内部回路の見直し、XLRプラグやケーブル代、そもそものバランスヘッドホン市場の狭さ、を考えると納得できるところ。何より、音が素晴らしい。
本機はバランスヘッドホン普及機として、非常に価値がある一品。HD53Nと同時購入でも、惜しくはないと思わせる魅力がある。













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HP-53FB 投稿者:plto 投稿日:2010.3.1

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