第8回 CDH-507 vs HD590

 今回は実売価格1万円以下と2万円台の対決となりました。
 CDH-507はDJ用ですが、かなり癖が強く一筋縄ではいかない機種です。実際にこのヘッドホンをDJ用途で使用している人がいるかは甚だ疑問です。HD590はHD600やHD650と比べるとエッジがきつい上ドンシャリ気味で、ポップスの女性ヴォーカルに向いていると言われることが多いです。さすがに上位機種と比べると見劣りする感はありますが、SENNHEISERらしく、しかもなかなか刺激的でもあります。

類似点:音域傾向(どちらもややドンシャリ)、ノリの良さ
相違点:密閉型特有のこもり感の有無、音調(CDH-507は乾、HD590は湿)

 類似点ははっきり言ってこじつけです。一聴しただけでまったく違う音だと感じます。また、音質だけでなく装着感もまったく違います。まったく違うので比較しないほうがいいのかもしれませんが、正直なところCDH-507は最悪レベル、HD590は最高レベルです。


・宇多田ヒカル「First Love」
CDH-507:
ヴォーカルの艶っぽさみたいなものは感じられますが、サ行の音がきつく、乾いた感じがして楽しめません。ヴァイオリンやピアノもヴォーカルと同じような不自然さを感じますが、金管楽器やタンバリンはなかなか心地よい音を鳴らしますし、ベースやドラムも悪くありません。ただし、全体的に温かみが足りないです。
HD590:
ほとんど文句ない音を鳴らしますが、ヴォーカルのアクセントの箇所がやや痛いです。ただし、全体的にはバランスが良くしかも温かみにあふれています。ギター、ピアノ、ヴァイオリン、ベース、ドラム、タンバリン、金管楽器すべて及第点以上の音を鳴らしてくれます。
比較:
HD590の圧勝です。どちらもヴォーカルがやや痛い部分がありますが、CDH-507は聴けないレベル、HD590は聴けるだけでなく聴きこめるレベルです。

・BUNP OF CHICKEN「天体観測」
CDH-507:
なかなか相性がいいようです。ヴォーカルは癖があるものの良く聴こえてきますし、各楽器が良く分離しています。ベースはにじんでいますが、ギターはいい感じに鳴らしてくれます。ドラムやハイハットはもう少し聴こえてきても良さそうなものですが。
HD590:
ヴォーカルは悪くないのですが、ギターが駄目です。ベースやドラムはそこそこですが、ハイハットの鮮やかさが足りないこともあり、いまいちメリハリがありません。ソースのこもった感じをそのまま拾ってしまった形になっているように感じます。全体的なバランスは良く、聴きやすいのですが。
比較:
HD590の方が良いです。HD590とこの曲との相性はあまりよくありませんが、それでもCDH-507よりは良いと感じました。ただ、CDH-507の癖が許容できるなら切れやノリの良さはCDH-507の方が良いように感じました。

・system F「TOGHETHER」
CDH-507:
ノリは良いのですが、温かみには欠けます。全音域に渡って響きが控えめで切れのある音が楽しめます。DJ用だけあって打ち込み系の曲とはかなり相性が良いようです。
HD590:
温かみにあふれていてこの曲の幸福感が良く伝わってきます。中域〜高域は適度な刺激があり文句ないのですが、低域のしまりが足りないためにいまいちノリが良くありません。
比較:
HD590の方が良いです。ただ、ノリの良さを重視するならCDH-507の方が良いかもしれません。個人的には温かみと総合的なバランスでHD590の方が良いように感じました。

・「パッヘルベルのカノン」
CDH-507:
オルガンは気持ちいい音を鳴らすのですが、弦楽器の自然さがまったくありません。全体的に温かみがなく、まったく感動できないです。この曲とはかなり相性が悪いと思われます。
HD590:
素晴らしいです。弦楽器は温かみにあふれ、オルガンは鮮やかです。音の分離とまとまりのバランスが程よく、非常に音楽を楽しめます。このヘッドホンの刺激的な部分がほとんど感じられません。
比較:
HD590の圧勝です。オルガンはいい勝負なのですが、弦楽器の自然さと全体的な温かみでは比較になりません。

・ロード・オブ・ザ・リング オリジナルサウンドトラックより「The Bridge Of Khazad Dum」
CDH-507:
ブラスがなかなか美しいですが、弦楽器や合唱はただ鳴らしているという感じです。勢いはあるのですが、いかんせん自然さが足りません。全体的にはブラスの高音が前に出すぎでバランスが悪いです。
HD590:
やや低めの音に感じるものの、ブラスが美しいです。弦楽器や合唱は聴けるレベルですが、低音の薄さがあだとなり太鼓がいまいちです。この曲のスピード感と緊張感があまり伝わってきません。そうは言っても全体的なバランスはなかなかのものです。
比較:
HD590の方が良いです。ブラスの美しさはそれなりに比較できるレベルではあるのですが、その他は比較にすらなりません。


 今回の対決はHD590の圧勝でした。何を聴くにしてもHD590の方が上です。ただし、CDH-507の癖が許容できる人で、切れのある音が好きな人やポップスメインで聴く人には、コストパフォーマンス的にCDH-507の方がいいかもしれません。どちらも刺激的な部分があるヘッドホンですが、こと刺激という意味ではCDH-507の方が上です。
 相性としては、CDH-507は打ち込み系、HD590はかなりオールマイティだと思います。低価格でしまりのある低音が欲しい人にはCDH-507はなかなか良いかもしれません。
 どちらの機種も1台目のヘッドホンとして購入する人はあまりいないでしょうが、2台目のヘッドホンとしてならそれなりにすすめられる個性のある機種です。2台目のヘッドホン購入を考えている人で、JESTTAXとSENNHEISERのヘッドホンを持っていない人は、選択肢の一つとして考えてみてはいかがでしょうか?