第7回 DT770PRO vs HD280Pro

 さて、比較レビュー(裏)も、もう第7回。いい感じに力が抜けてきました。
 今回はDT770PROとHD280Proです。どちらも実売2万円前後と近い価格帯ですが、DT770PROの方が5千円くらい高いようです。DT770PROはbeyerdynamicらしい刺激的でドンシャリのヘッドホンです。一方HD280Proはエッジのきつさは似ていますが、かまぼこです(とは言ってもそこそこフラットですが)。
 音調は結構近いような気がしますし、なかなかいい勝負になりそうです。。
 
類似点:プロ用らしいエッジのきつさ、密閉型特有のこもり感
相違点:音域傾向(DT770PROはドンシャリ、HD280Proはややかまぼこ)

 ではでは、やってみましょう。


・宇多田ヒカル「First Love」
DT770PRO:
ほとんど文句ないです。ヴォーカルがなかなか艶っぽく魅力的なのですが、サ行の音などがややきついです。ギターやタンバリンがシャキシャキ聴こえてきて心地よいです。金管楽器やピアノも良く聴こえます。ヴァイオリン、ベース、ドラムはやや大人しめです。
HD280Pro:
ほとんど文句ない音を鳴らしてくれますが、強いて言えばもう少しヴォーカルに透明感が欲しかったです。ヴォーカルがかなり強く聴こえてきます。一方、ギター、ドラム、ヴァイオリン、金管楽器などが軒並やや弱めです。ベースは厚み・量ともに十分で動きが良く分かります。
比較:
ほぼ互角です。ヴォーカルはDT770PROの方が若干良いのですが、全体的な温かみという点ではHD280Proの方が若干良いです。

・BUNP OF CHICKEN「天体観測」
DT770PRO:
なかなかノリが良く楽しめます。ヴォーカルがしっかり聴こえます。ギターとドラムはしっかり聴こえてきますが、ベースがやや力ないのが残念。予想通りハイハットが気持ち良いです。意外なことにエッジのきつさがまったく気になりませんでした。
HD280Pro:
ソースが悪いと言ってしまえばそれまでなのですが、全体的にかすんでいます。特にハイハットが良くありません。ただ、各楽器がかなり良く分かれて聴こえます。そのあたりはさすがモニター用というところです。ただ、魅力的な音楽を聞かせてくれるかといえば、不満が残ります。
比較:
DT770PROの勝ちです。HD280Proはかすんでいる上、低音過多でスピード感がありません。その点、DT770PROはやや軽めに感じるところもあるものの非常に良いです。

・system F「TOGHETHER」
DT770PRO:
なかなか楽しめますが、この曲の温かみや幸福感を堪能するには高音がやや強すぎです。生楽器を得意とする反面、この曲のような打ち込み系の曲ではやや響きが豊か過ぎて切れや音の鮮やかさに欠けるようです。とは言うもののなかなか楽しめるのですが。
HD280Pro:
なかなか相性が良いようです。それぞれの音がきちんと分かれて聴こえます。やや響き過ぎですが、ノリ良く楽しめる範囲です。この曲の温かみや幸福感がしっかり伝わってきます。その上、刺激的でスピード感も十分あります。
比較:
いい勝負ですが、HD280Proの方がやや良いです。HD280Proの方が、この曲の温かみが伝わってきますし、あまり粗が感じられません。

・「パッヘルベルのカノン」
DT770PRO:
素晴らしいです。弦楽器は自然で、オルガンは鮮やかに聴こえてきます。この曲の温かみが良く伝わってきますし、なによりそれぞれの楽器が魅力的です。全体的にやや高音よりに感じますが、ほとんど気になりません。やや刺激的で繊細さに欠ける部分はありますが、各楽器がしっかり聴こえる上、全体的なバランスも良く、音楽に自然と引き込まれます。
HD280Pro:
なかなか良いですが、録音時のノイズを拾い過ぎのためやや音楽に集中しにくいです。弦楽器は原音に忠実なのかもしれませんが、いまいち魅力に欠ける音です。オルガンはなかなか良く聴こえます。悪くはないのですが、モニターらしさが悪いほうに発揮されてしまったように感じます。
比較:
DT770PROの勝ちです。生楽器には有利だろうとは思っていましたが、予想以上に差は大きかったです。DT770PROが良かったのと、HD280Proがいまいちだったのと両方ありますが。ただ、温かみという点ではHD280Proの方があった気がします。そのあたりで評価に個人差は出そうでした。

・ロード・オブ・ザ・リング オリジナルサウンドトラックより「The Bridge Of Khazad Dum」
DT770PRO:
ブラスが非常に美しいです。弦楽器や合唱もなかなか良いです。この曲のスピード感と緊張感がしっかり伝わってきます。全体的にも良くまとまっており、ほとんど文句ないです。
HD280Pro:
なかなか良いですが、やや響きすぎです。ソースがソースなので、相性があまりよくなかったようです。しかし予想よりはブラスがかなり美しく、弦楽器や合唱も聴けるレベルです。モニター用とは思えないほど迫力ある鳴らし方をしてくれます。
比較:
DT770PROの方がやや良いです。どちらもブラスは美しいのですが、DT770PROの方がやや鮮やかです。ただ、HD280Proと比べると低音が不足に感じる部分もあるので、人によってはやや評価が違ってくるかもしれません。


 なかなか良い勝負でしたが、DT770PROの方がやや良かったように思います。アバウトに言うと、生楽器を聴くならDT770PRO、打ち込み系ならHD280Proという相性のようです。
 DT770PROは低音がすごいと言われていて、確かにそうだとは思うのですが、HD280Proの方がさらに出る気がします。これはおそらくイヤーパッドの材質の違いでHD280Proの方が密閉度が高いからだと思いますが。まあ、SENNHEISERの密閉より低音が出る機種というのもそうはないと思いますが。DT770PROはSENNHEISER等の高音まったりに慣れているとかなり高音が刺激的です。それがbeyerdynamicの持ち味なんですが。
 HD280Proははっきり言ってあまり評判が良くない機種だと思いますが、エッジのきつさを除けばそこそこ聴けるように思いました。実売1万円台ですし、あまり贅沢は言えません。
 また、どちらも音楽鑑賞に使うには少しばかりエッジがきつすぎです。今回の比較はそういう意味でかなり疲れました。時々はこういう刺激的なヘッドホンもいいのですが、いつも使うにはちょっときつい機種です。刺激的なヘッドホンが欲しいと思っている人にはどちらもなかなかおすすめできる機種です。