第6回 HP-M1000 vs SE-M380

 あー、なんかいまいちやる気が出ないのが来ちゃいましたね。
 HP-M1000は分解能や音場感は価格分の価値はないと思いますが、エッジがきつくない上バランスとノリの良さがなかなか良い感じで聴きやすいです。SE-M380は低音が豊かで高音は出ないですが、価格のわりにはなかなか良く出来た機種です。
 しかし1万円台と5千円以下という価格差はいかんともしがたい感はありますが・・・
 類似点と相違点は現時点ではっきり言えるのは下の通りです。

類似点:密閉型特有のこもり感、
相違点:高域の量

 兎も角やってみましょう・・・


・宇多田ヒカル「First Love」
HP-M1000:
全体的に非常にバランスが良いです。ヴォーカルがなかなか艶っぽいです。ピアノ、ギター、金管楽器はきちんと聴こえるものの鮮やかさには欠ける感じです。ベースはやや音量が大きめですが悪くないです。タンバリンやドラムは及第点といったところです。
SE-M380:
全体的に曇った感じがして、生気が感じられません。とにかくヴォーカルの艶っぽさ以前に、作り物っぽく力強さがないため魅力的に感じられません。それにベースが強すぎです。ピアノとギターは意外と良いですが、タンバリンや金管楽器は聴こえてきません。
比較:
HP-M1000の圧勝です。ほとんど全てにおいて勝っていると言って良いでしょう。特に、ヴォーカルが魅力的かどうかがこの曲のポイントだと思うのですが、その点SE-M380は駄目でした。

・BUNP OF CHICKEN「天体観測」
HP-M1000:
スピード感はあるのですが、各楽器があまりはっきり分かれて聴こえてきません。ヴォーカルは悪くないですが、ギターやハイハットが曇っているのが気になります。ベースやドラムは及第点です。
SE-M380
こもり感が酷いですが、思ったよりは各楽器がそこそこ分かれて聴こえてきます。そうは言ってもHP-M1000にはやや及びませんが。ヴォーカルはもともと曇っているのにさらにフィルタをかけたようになっています。ベースはそこそこですが、ギターやドラムは力がありません。ハイハットが思ったよりは聴こえてきたのが印象的でした。
比較:
HP-M1000がやや良いです。思ったよりいい勝負でしたが、SE-M380はHP-M1000と比べてとにかくこもり感が酷く、ノリが悪いです。

・system F「TOGHETHER」
HP-M1000:
なかなか相性が良いです。それぞれの音がきちんと分かれて聴こえるうえ、響きも適度でノリが良く楽しめます。この曲の温かみや幸福感がしっかり伝わってきます。HP-M1000のドンシャリ具合がちょうど良くマッチしているように感じられます。
SE-M380:
やはりこもり感が酷いです。高域はそれなりに聞こえるのですが、中域が完全に低域に飲み込まれていて聴こえてきません。低音よりのためそれなりに温かみはあるのですが、鮮やかさが無いため魅力的とは言い難いです。
比較:
HP-M1000の圧勝です。HP-M1000はほとんど文句ない鳴り方でしたが、SE-M380はこもり感が酷く鮮やかさに欠けます。それがこの曲ではかなり明白な差になってしまいました。

・「パッヘルベルのカノン」
HP-M1000:
相性はいまいちなようです。弦楽器は自然さに欠け、オルガンもいまいち鮮やかさが感じられません。そうは言ってもどの楽器も過不足ない音量で、メリハリ良くしかもスムーズに聴こえてくるので、しっかり集中して聴き込むのでなければ悪くないです。ある意味非常にHP-M1000らしい鳴らし方だと感じました。
SE-M380:
自然さも何もあったものではありません。弦楽器もオルガンも曇っていて、ただ音が鳴っているだけにしか感じられません。低音よりでエッジはきつくないため、かろうじて温かみの欠片くらいはあるのがせめてもの救いです。
比較:
HP-M1000の圧勝です。HP-M1000もこの曲を聴くには向いてないと思うのですが、SE-M380とは比較になりませんでした。HP-M1000は一応聴けるレベル、SE-M380は聴けないレベルです。

・ロード・オブ・ザ・リング オリジナルサウンドトラックより「The Bridge Of Khazad Dum」
HP-M1000:
バランスはいいのですが、ブラスはやや曇っている上、弦楽器に自然さがありません。合唱は及第点です。各楽器に焦点を絞って聴き込むと欠点だらけですが、全体的にはそこそこ聴けるレベルにまとまっています。スピード感はあるのですが、緊張感に欠けるのが残念。
SE-M380:
ブラスが曇っている上に音が低く感じられます。全体的に低音過剰で自然さは微塵も感じられません。この曲自体、響きすぎの感があるのですが、SE-M380と組合わせるとそれが悪い方向に働くようです。エッジがきついわけではないのですが、聴き疲れします。
比較:
HP-M1000の勝ちです。HP-M1000もブラスが魅力的とはいえないのですが、SE-M380と比べると遥かに良いです。スピード感もある上、聴き疲れもしません。


 冒頭でも書いた通り、1万円台と5千円以下という価格差は致命的でした。ほとんどの曲でHP-M1000の圧勝です。
 ただ、HP-M1000も生楽器の自然さには欠ける上、分解能や音場感はいまいちなので、クラシックには向かないです。もっと言うなら、ポップス以外にはあまり向かないとも言えます。逆に、ポップスなら価格以上の価値は十分にありますし、それ以外のジャンルでもそこそこには鳴らしてくれるので、普通のDJ用よりは万能型と言えるでしょう。
 SE-M380は、この価格帯ではそれなりに出来が良いと言われている機種ですし、私自身もそう思っていたのですが、実際聴き比べてみると差は歴然でした。
 というわけで、SE-M380を買おうと思っている人で、追加で1万円出してもいいという人はHP-M1000を買いましょう。そして、更にもう1万・・・という風にきりがなくなってしまうのですが・・・