第4回 ATH-W1000 vs MDR-NC20

 笑うしかないですね。くじびきなのでこんなこともあるでしょう・・・それにしてもすごい対決です。何も知らないヘッドホンマニアがこのタイトルだけ見たらわけが分からないでしょう。
 とりあえず類似点と相違点です。

類似点:どちらも密閉型
相違点:音域傾向、ノイズキャンセリング機能の有無

 類似点は密閉型ということくらいしかありません。これほど類似点の少ないヘッドホンというのもある意味珍しいです。が、勝敗の分かりきっている試合をしても仕方ない、とは思いません。ヘッドホンには個性や得意分野がありますから・・・


・宇多田ヒカル「First Love」
ATH-W1000:
ヴォーカルがかすれ気味に感じますが、なかなか良いです。ピアノやヴァイオリン、金管楽器は美しいですが、ギターの音がちょっと高すぎで浮いています。この曲を聴くには、このヘッドホンは全体的に低音が不足気味で高音が目立つ気がしました。
MDR-NC20:
全体的にこもり感がひどいですが、この曲の場合それが一つの味と感じられなくもないです。しかしヴォーカルはとにかく魅力が足りません。ベースや金管楽器はそこそこですが、他の楽器は全然駄目です。特にギターは聴こえてきません。
比較:
MDR-NC20の方が低音よりなので、ある種の温かみのようなものはありますが、それだけです。分かっていたことですが、分解能と音場感が段違いです。ヴォーカルの艶っぽさ、一つ一つの楽器の動きなどもATH-W1000の圧勝です。

・BUNP OF CHICKEN「天体観測」
ATH-W1000:
低音が不足ですが、それ以外は文句ないです。ヴォーカルがはっきり聴こえますし、ギターやハイハットが気持ち良いです。ベースとドラムはやや迫力不足ですが、動きは良く分かります。この曲との相性は良くないと思いますが、それでもそれなりに聴かせてくれます。
MDR-NC20:
低音よりのヘッドホンなのに全然ノリが良く感じらられません。ヴォーカルはかすんでいますし、ベースがもこもこしています。なによりギターやドラム、ハイハットがほとんど聴こえてこないです。
比較:
この曲は低音よりのMDR-NC20に有利かと思いましたが、全然駄目でした。この曲はただでさえヴォーカルがはっきりしないため、MDR-NC20とATH-W1000の霞のなさや鮮やかさの差がはっきり出てしまう結果になりました。

・system F「TOGHETHER」
ATH-W1000:
ATH-A900のときも感じたことですが、打ち込み系の音楽とはなかなか相性が良いです。しゃきっとした高音と音の広がりが良いです。ただし、欲を言えば、もう少しこの曲の温かみを伝えて欲しかったです。
MDR-NC20:
こもり感がひどい上に高音が足りないため、全然魅力が感じられません。他の曲にも言えることですが、スピード感がないです。ただし、低音よりのヘッドホンのためこの曲の温かみは多少感じられます。
比較:
ATH-W1000の圧勝です。比較になりません。

・「パッヘルベルのカノン」
ATH-W1000:
弦楽器の自然さといい、オルガンの音といい、かなり良いです。繊細さと温かみにあふれ、この曲の魅力を余すところなく伝えてくれます。この曲との相性はかなり良いです。
MDR-NC20:
意外なことに、弦楽器がそれなりに聴こえます。他の曲よりはまともに鳴らしてくれます。ただし、低音の反響音が気になりますし、オルガンは鮮やかさが足りません。
比較:
ATH-W1000の勝ちです。MDR-NC20も他の曲よりはまともに鳴らしてくれるのですが、ATH-W1000もこの曲とは相性が良く、比較になりませんでした。

・ロード・オブ・ザ・リング オリジナルサウンドトラックより「The Bridge Of Khazad Dum」
ATH-W1000:
ブラスが非常に美しいです。弦楽器、合唱も満足です。バランス良く、しかもこの曲のスピード感や緊張感が感じられます。
MDR-NC20:
すべての音がひとかたまりになって聴こえてくるような分解能の悪さです。この曲の最大のポイントであるブラスが全然駄目です。スピード感がまったく感じられません。
比較:
ブラスなど高音がポイントになる曲では、この二つのヘッドホンの差は特に明確に出るようです。ATH-W1000の圧勝です。


 自分で点数つけといて何ですが、やはり音質評点4.5と1.5はレベルが違います。高音よりとか低音よりとか関係なく、何を聴いてもATH-W1000の方が良いでしょう。
 ただ、ATH-W1000はaudio-technicaの音を聴きなれていない人にとってはやや違和感があるかもしれません。一方、MDR-NC20はある程度ヘッドホンにこだわっている人にはこもり感やかすんだ感じが我慢ならないでしょう。
 今回の聴き比べを終えて、この二つのヘッドホンの類似点を新たに一つ発見しました。それは録音の粗が目立たないことです。目立たない理由は、ATH-W1000は音楽鑑賞に特化して粗が目立たないようにしているためで、MDR-NC20は分解能が低い上こもり感や霞がひどくて粗が目立ちにくいためです。正反対の理由ですが、やはり音楽鑑賞に使うのであれば粗は目立たない方が良いと、改めて思いました。