HD53

概要
 詳細はメーカー製品ページを参照のこと。
 入力端子は1系統。バランス(XLR)またはアンバランス(RCA)を使用。スピーカー出力が1系統あるが、これはおまけ程度と考えた方が良い。
 ヘッドホン出力は2系統、ボリュームも2つ付いていて個別に変えることができる。標準プラグとミニプラグいずれも使用できる形になっていて使いやすい。接続上は4台のヘッドホンを接続できるが、このような使用方法は避けた方が良いようだ。
 ゲイン切替スイッチ等はないが、価格を考えればこれでも十分な機能だろう。
 サイズ、重量いずれもほどほどで、特に不満はないだろう。外観は癖がなくシンプル。これほど万人受けするデザインもそうないと思われる。

音質
 癖のない音作り。無個性と言っても良い。あまり自己主張しない。良くも悪くも音楽性とは無縁な方向性。これと言った長所がない代わりに大きな欠点もなく、どんなヘッドホンでもその癖を殺さずにそこそこ性能を引き出してくれる。冷静な鳴らし方。音の密度がやや薄く、特に高域では粗が気になることがある。粗のあるヘッドホンと組み合わせるとエッジがきつく聴き疲れしやすいように感じる。輪郭は基本的には明確な方向性なのだろうが、過剰な明確さは無いし、逆にややぼやけているように感じることもある。質感はやや硬くて冷たく、爽やか。ただし、過剰な硬さは無い。どちらかと言えば、しっとり落ち着いていると言うよりは軽快でパンチのある鳴らし方。ただし、前述の通り基本的には冷静。音の立ち上がりやスピード感は良くもなく悪くもなくと言った印象。
 周波数特性は非常にフラット。低域も高域も良く伸びている。その上、低域にも高域にも重心が偏っておらず、全音域に渡って味付けなく鳴らしてくれる。情報量はそれなり。必要量はあるが、あまり多くはない。一つ一つの音がある程度しっかりと分離して聴こえるが、各々の音の微細な描写は苦手。空間表現はどうもあまり得意ではないようだ。音場表現に優れた機種を使用すると、その力を十分引き出すことができないように感じる。残響音や音の伸びは適度からややあっさり。その他気になる点としては、オーケストラ等を聴くと力感にやや欠ける点が挙げられる。それにしても、全体としては価格なりのものは持っているし、何より非常に癖のない機種。多数のヘッドホンを使い分ける人にとっては、ヘッドホンを選ばないキャラクターが重宝する場面もあるだろう。
 敢えて相性の良いヘッドホンを選ぶなら、HD650のような低域の量感があり高域が控え目な機種が良いだろう。低域が若干薄めで高域の粗が気になりがちなHD53では、低域の量感が程々に高域の粗が目立たなくなる。

その他
 ボリュームノブの直径は約22mm。大きすぎず、小さすぎずといった感じ。ガリノイズ(音を鳴らしながら音量を変えると発生)とギャングエラー(左右のボリュームがうまく連動しないで音が片方に寄ってしまうこと)が酷い。このガリノイズ、ギャングエラーはかなり個体差があるようだ。私の所有しているものは、左側のボリュームではガリノイズはほぼなく、大体8時以下でギャングエラーがあるのに対して、右側のボリュームでは8時以下ではガリノイズが出る上、左側よりもやや上までギャングエラーがある。特に低インピーダンス・高感度の機種では酷い。音量のとりやすいヘッドホンを使用する場合、ボリュームが8時程度で十分な音量が取れることもあり、そういう意味では音量のとりやすいヘッドホンとの組み合わせでは使いにくいことが多い。ボリュームのタッチは軽すぎず重すぎず、ちょうど良い感じ。ただ、ボリュームの回転に合わせて正確に音量が上下してくれるとは言いがたいし、回すとややザラザラした感触がある点が気になる。
 本体の発熱はかなりある。長時間使用すると手で触っていられないほど高温になるが、それでもAT-HA2002やHA-1Aと比べてやや熱いという程度。低インピーダンスのヘッドホンを2台同時に接続すると、高インピーダンスを1台使用する場合よりもやや発熱が多いようだ。一応A級動作で、しかもインピーダンスに関わらず同じ音量を鳴らすように自動的に調節してくれるIGM(Intelligent Gain Management)が働くので、致し方ないところか。電源ランプは青色で、やや明るめ。
 付属しているRCA−ミニプラグ変換コードはかなりチープなので、基本的には使用しない方が良いだろう。市販の数千円のRCAケーブルの方が遥かに良い。更に、安価なものでもいいのでXLRケーブルを使用すると、情報量が増え明瞭になる。
 欠点はあるものの、低価格で癖のない音、しかもXLR入力や左右独立したボリューム等の仕様が魅力。

付属品
電源ケーブル
RCA−ステレオミニプラグ変換ケーブル

参考
不定期コラム『第40回 ヘッドホンアンプの内部写真』





※生産終了










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スペック

形式 再生周波数帯域 全高調波歪率(THD) S/N比
Solid State 20Hz〜20kHz 0.01% 100dB
推奨負荷インピーダンス 外形寸法 重量 参考最安価格
32Ω〜2kΩ 217.5(W)×301(D)×51(H)mm 2.6kg 26000円
※生産終了

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公開日:2006.9.9