EMP-708-WP

音質
 低音よりのかまぼこ。低域は若干少なめ。ローエンドはかなり少ないが、中低域はしっかり出る。薄く曇ったような質。重心は高め。中域は低域の曇りに覆われる感じ。質的にはどちらかと言うと落ち着いていて聴きやすい。高域はかなり少ない。中高域の方がしっかり出る感じで太めの質。質だけ見れば最低限の硬さや明るさはあるが、伸びが悪くハイハットやシンバルは目立たない。
 分解能は価格の割に悪い。音の分離にしろ一つ一つの音の描写にしろいまいち。音場感は、広さは普通だが明確さに欠け見晴らしが悪く把握しにくい。音像がややぼやけている。原音忠実性はいまいち。高域の量が少なすぎるし、低域の癖や振動も気になる。一聴して違和感がある。原音の粗や生っぽさはあまり感じられない。エッジはあまりきつくないが、振動やこもり感で聴き疲れする面は多少ある。高域にしろヴォーカルのサ行にしろ特に痛くはない。
 明瞭さ、音の鮮やかさは悪い。厚みは普通からやや薄め。温かみは悪くないように感じられるが、これは曇りと塗りつぶしたような質感からくるぬるま湯のような温かみで、生楽器や人声のリアルな温かみは感じられない。ヴォーカルの艶っぽさはいまいち。スモーキーでソースによっては魅力的だが、明るさや透明感を求めるなら合わないだろう。おとなしい傾向。切れやスピード感はいまいち。響きは適度からやや豊か。こもり感は特殊。通常のカナル型のような耳とイヤホンの間でこもって圧迫感がある感じとは違い、イヤホン内でこもった音がそのまま耳に届くような感じ。瑞々しさや生気に欠けるように感じられることが多い。
 弦楽器は滑らかで心地よいが、繊細さや生楽器らしさには欠ける。金管楽器は、金属的な質感はそれなりに出してくれるが量が少なく、地味ではないものの鮮やかとは言い切れないような感じ。打ち込み系の音の表現はいまいち。音の質感の相性、切れ、低域の質等、様々な点から見て不満。
 骨伝導という前提で考えるなら極端に癖の強い音ではないが、通常のダイナミック型と比べるとコストパフォーマンスは良くないし、低域の多いソースだと振動が気になる。

装着感
 普通。やや大きいせいか、あまりフィットしない感じ。かなり重いが、実用上特に問題はない。ずれやすい、コードが顔に当たりやすい等の不満もない。骨伝導でカナル型ということで容易に想像できるが、振動で微妙に密着具合が変わったり耳の穴がくすぐったかったりする。特に低域の多いソースでは顕著。逆に、低域のないソースではほとんど振動が発生しないため、そのような特殊な問題は発生しない。
 イヤーピースの材質はシリコンのようだ。3サイズ付属している。イヤーピースの側面に小さな穴が4つ開いている独特の形状。そのせいで普通のカナル型と違って密封されない。

その他
 遮音性は悪い。カナル型とは思えないレベル。音漏れ防止は普通。カナル型としてはやや悪い。
 作りは価格なり。デザインは普通だが、形状はやや個性的。非常に音量が取りづらい。据え置きの機器でも十分な音量が取れないことがある。水深5mまで耐える防水。
 プラグは金メッキのミニプラグ。コードの太さは合流前は約1.5mm、合流後は約2mm、硬さは普通で特に扱いづらさは感じない。

付属品
イヤーピース3種類
1m延長コード
キャリングポーチ



参考
周波数特性グラフ

※本機は骨伝導式のため周波数特性の測定はまともにできないが、測定結果が実聴と近い結果だったので一応掲載しておく。

比較メモ
IE-1
EMP-708-WPは低音よりのかまぼこ、IE-1はやや高音より。低域はEMP-708-WPの方がやや量が多い。EMP-708-WPの方が薄く曇ったような質。重心はIE-1の方がやや低い。中低域はEMP-708-WPの方がしっかり出る。中域はIE-1の方が明るく、低域に邪魔されずはっきり聴こえてくる。高域はIE-1の方がかなり量が多い。IE-1がハイハットをシャンと鳴らすところを、EMP-708-WPはチンと鳴らすような音色の違いがある。分解能はIE-1の方が上。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろやや勝っている。音場感は、広さは大差ないが、IE-1の方がかなり明確で見晴らしが良く把握しやすい。原音忠実性は微妙。EMP-708-WPは高域が少なすぎるのに対して、IE-1は高域が目立ちすぎる。EMP-708-WPは低域の癖や振動が気になるのに対して、IE-1は付帯音の多さが気になる。原音の粗や生っぽさはIE-1の方が感じられる。エッジはIE-1の方がきついが、EMP-708-WPの方が振動やこもり感で疲れる面があり、総合的な聴き疲れはソースや聴く人によって変わってくるだろう。高域にしろヴォーカルのサ行にしろIE-1の方がやや痛い。明瞭さ、音の鮮やかさはIE-1の方がかなり上。厚みはほぼ同レベル。温かみは薄く曇っている分EMP-708-WPの方が感じられる面もあるが、人声や生楽器のリアルな温かみという意味ではIE-1の方が感じられる。ヴォーカルの艶っぽさはIE-1の方がやや上。EMP-708-WPの方がスモーキー、IE-1の方が擦れやリップノイズを出してくれる。IE-1の方が明るく元気でノリが良い。切れやスピード感がある。響きは、低域はEMP-708-WPの方が豊か、高域はIE-1の方が豊か。EMP-708-WPの方がこもり感がかなり気になる。EMP-708-WPの方が生気に欠ける印象。弦楽器は、EMP-708-WPの方が滑らかで心地よい、IE-1の方が生楽器らしさが感じられる。チェロやコントラバスの量を求めるならEMP-708-WPの方が良いが、ヴァイオリン等を澄んだ感じで聴きたいならIE-1の方が良い。金管楽器はIE-1の方がかなり鮮やか。打ち込み系の音の表現はIE-1の方がうまい。音の質感の相性や切れで勝っている。使い分けるなら、低域の量やエッジの丸さ重視ならEMP-708-WP、高域の量や生楽器らしさ重視ならIE-1。

j-JAYS
EMP-708-WPは低音よりのかまぼこ、j-JAYSは低音より。低域はj-JAYSの方がやや量が多い。特にローエンドは差がある。どちらも薄く曇ったような質。重心はj-JAYSの方がやや低い。中域はどちらも低域の曇りに覆われる感じだが、質的にはEMP-708-WPの方が若干明るい。高域はj-JAYSの方が若干量が多い。EMP-708-WPの方がやや硬い質、j-JAYSの方がやや線が細く伸びが良い。分解能はj-JAYSの方が若干上。音の分離は大差ないが、一つ一つの音の微細な描写はj-JAYSの方がやや丁寧にこなしてくれる。音場感は、EMP-708-WPの方がやや広いが、明確さは大差ない。原音忠実性は微妙。周波数特性上の癖のなさはj-JAYSの方が若干上。原音の粗や生っぽさはEMP-708-WPの方が若干感じられる。エッジはEMP-708-WPの方が若干きつく、振動で疲れる面もあり、やや聴き疲れしやすい。高域にしろヴォーカルのサ行にしろ大差ない痛さ。明瞭さ、音の鮮やかさは大差ないが、どちらかと言うとEMP-708-WPの方が上。厚みはj-JAYSの方が若干ある。温かみはほぼ同レベル。ヴォーカルの艶っぽさはj-JAYSの方が若干感じられる。ヴォーカルはどちらもスモーキーだが、EMP-708-WPの方が若干硬く明るい。j-JAYSの方が繊細。響きはj-JAYSの方がやや豊か。こもり感は微妙。EMP-708-WPのこもり感はイヤホン内でこもった音がそのまま耳に届くような感じ、j-JAYSのこもり感は通常のカナル型と同じで耳とイヤホンの間でこもって圧迫感がある感じ。弦楽器はj-JAYSの方が繊細かつ心地よいが、音色が暗すぎるようならEMP-708-WPの方が合うかもしれない。金管楽器はEMP-708-WPの方がやや金属的で鮮やか。打ち込み系の音の表現はEMP-708-WPの方が若干うまい。音の質感の相性や切れで若干勝っている。使い分けるなら、明るさや切れ重視ならEMP-708-WP、低域の量や繊細さ重視ならj-JAYS。

TH-EB900
EMP-708-WPは低音よりのかまぼこ、TH-EB900は低音より。低域はTH-EB900の方がやや量が多い。特にローエンドは差がある。EMP-708-WPの方が薄く曇ったような質、TH-EB900の方が柔らかくぼやけた質。重心はTH-EB900の方がやや低い。中域は、EMP-708-WPの方が低域の曇りに覆われる感じ、TH-EB900の方が低域の量に負ける感じ。高域はTH-EB900の方が若干量が多い。EMP-708-WPの方がやや硬い質、TH-EB900の方がやや線が細く伸びが良い。分解能はTH-EB900の方がやや上。音の分離にしろ一つ一つの音の微細な描写にしろ若干勝っている。音場感は、広さは大差ないが、TH-EB900の方がやや明確。EMP-708-WPの方が音像がぼやけている。原音忠実性はTH-EB900の方がやや上。周波数特性上の癖のなさで若干勝っている。原音の粗や生っぽさはTH-EB900の方が若干感じられる。エッジのきつさは大差ない。EMP-708-WPの方が振動で疲れる面があるのに対して、TH-EB900の方が低域の量や音の圧力で疲れる面があり、総合的な聴き疲れはソースや聴く人によって変わってくるだろう。高域にしろヴォーカルのサ行にしろ大差ない痛さ。明瞭さ、音の鮮やかさはほぼ同レベル。厚みはTH-EB900の方がややある。温かみ、ヴォーカルの艶っぽさはTH-EB900の方がやや感じられる。ヴォーカルはEMP-708-WPの方がやや塗りつぶしたような質感。どちらもおとなしい傾向だが、TH-EB900の方が低域に基づく迫力や力強さがある。響きはTH-EB900の方がやや豊か。こもり感は微妙。EMP-708-WPのこもり感はイヤホン内でこもった音がそのまま耳に届くような感じ、TH-EB900のこもり感は通常のカナル型と同じで耳とイヤホンの間でこもって圧迫感がある感じ。弦楽器はTH-EB900の方が生楽器らしさが感じられるし、音色も自然。金管楽器はEMP-708-WPの方がやや金属的。打ち込み系の音の表現はほぼ同レベル。音の質感の相性は大差ない、切れはEMP-708-WPの方が若干上だが、TH-EB900はそのぶん厚みで聴かせる感じ。使い分けるなら、基本的にはTH-EB900、TH-EB900では低域の量が多すぎるとか高域の質が合わないという不満があるならEMP-708-WP。





※生産終了










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スペック

駆動方式 構造 周波数帯域 音圧感度 インピーダンス
骨伝導 - 50Hz〜12kHz 82dB
重量 ドライバー直径 コードの長さ コードの出し方 備考
10g - 0.62m 両出し(Y型) -

評点

音質 装着感 遮音性 音漏れ デザイン 携帯性 音の傾向 参考最安価格
1.5 3 2 3 3 5 中(低) 4100円

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公開日:2010.10.24

※生産終了